第14章 Orecchini【アバッキオ】
足取り軽くアジトへの道を戻る。
途中、ショーウィンドウや鏡を見かける度に覗き込んではふふ、と微笑んでしまう。
自分で言うのも何だが、なかなかしっくりきている、と思う。
1人でニヤニヤしてたんじゃあ変に思われるかも。
…でもこの状況なら、女性は誰だってこんな気持ちになるんじゃあないかしら?
今すぐ誰かに見せて感想を聞きたい気分だ──と彼女は考えて、苦笑しながらため息をついた。
なにせ、男ばかりのうちのチーム。
この石の繊細な魅力はおろか、ピアスが変わった事にすら気付いてもらえるかどうか怪しい。
そう、たぶん…アバッキオにも。
今までの記憶が泡のように浮かんでは消える。
もうずっと前から、彼が好きだ。
いつでも目で追ってしまう、意識してしまう。
彼のさり気ない仕草や言葉で本音が分かってしまうくらいに。
けれど、どういう風にしていたら彼は自分を女性として意識してくれるのか───それだけはどうしても分からなかった。
「アバッキオってどんな子がタイプなの?」と、直接聞けたならどんなに楽か。
もちろんそんな勇気などなかった彼女は、服装やら髪型やらをさりげなく変えてみては反応を伺うという、あまりにも地道なやり方を試みていたのだが…今の所一切上手くいっていなかった。
そもそも元来無口でクールなアバッキオに対し、この作戦はあまりにも無謀かもしれない、と薄々感じてもいた。
…まあ、自分が気に入っていればそれで良し。
オシャレは自己満足よ。
何とも哀しい開き直りと共にきゅっと唇を引き結び、チヒロはアジトの扉に手をかけた。
おかえり、という声に返事をしながら部屋を見回す。予想通り、メンバー達は今日も賑やかだ。
ジョルノとブチャラティが書類を片手に何か話し合っているかと思えば、部屋の隅では銃の手入れをしているミスタがピストルズ達とわあわあ騒いでいる。
どうしたのかしら、と思う間もなく、今度はフーゴとナランチャが喧嘩を始めた。
…うん、やっぱりこうよね。
チヒロは諦めに近い納得と共に、近場の椅子に腰掛ける。
するとそのすぐ後に、彼女の隣に座った者がいた。