第11章 Ubriacone【護チ】
「チヒロ、水を持ってきましたよ。さあこっちに座って、飲んでください」
今度はジョルノがごく自然な動作で、彼女をソファに連れ去った。
アバッキオの射るような視線が突き刺さるが、気にも留めていない様子だ。腰掛けたチヒロの背にそっと手を添え、優しくグラスを手渡してやる。
素直にそれを受け取った彼女は、透明な中身を何口か飲み下した。
「はぁ〜っ…おいしい。変ねェ、さっきまであんなにワイン飲んでたのに、お水がおいしいなんて」
「はは、それは良かった。身体が必要としているって事じゃあないでしょうか」
「えぇ?どういう事ォ?」
「アルコールを摂取する際には、水も一緒に飲んだ方が良いと言われているんです。利尿作用がありますし、体内でアルコールを分解する酵素が働くには水分が必要なんですよ」
首を傾げているチヒロに軽く説明してやる。
もっとも、これだけ酔っていれば記憶には残らないかもしれないが、どんな時でも彼女の話を適当にあしらう事はしたくなかった。
「へぇ〜、そうなのォ。ふふ、ジョルノったら、未成年なのにお酒の事にまで詳しいのね。
ほんと、貴方がいちばん年下だなんて信じられないわ」
チヒロは目を丸くして、楽しそうにころころと笑う。まるで少女のように無邪気な笑顔に、彼は内心「僕も、貴女がいくつも年上だなんて思えませんね」と呟いた。