第10章 fallita【ブチャラティ】
ブチャラティが来る。
どうしよう、どうしよう、いつ?もう少しってどのくらい?
凪いでいた思考回路が途端にパンクする。
今ブチャラティに会うなんて、無理だ。
どうすればいいのか分からない。
合わせる顔がない。
普段ならいつだって会いたくて仕方がない相手なのに、任務完了の報告は1秒でも早く伝えたいとばかり思ってきたのに、今は全てが真逆だ。
失態を犯した私に、ブチャラティは何を言うのだろう。彼は、何を思っているのだろう。
呆れただろうか。怒っただろうか。失望しただろうか。
役に立たない私を、彼はどうする?
頭に浮かぶのは最悪の光景ばかりで、指先が震える。
怖い。彼の顔を見るのも、言葉を聞くのも。
ふとベッド横の窓に目を向けると、街の雑踏に紛れて、病院の入り口へと歩みを進める者がいる。
仕立ての良い白のスーツ。切り揃えられた黒髪。見慣れた、いつもの姿。
──────ブチャラティ!!!!
ここに来る。
パニックになった私は、ベッドから転げ落ちるようにして病室の外へ飛び出した。