第9章 prego【ナランチャ】
「その、実は私、ほんとにホラー映画って苦手で…でも皆の手前そんな事言えなくて、結局観ちゃって、もう怖いシーンが頭から離れなくなっちゃったのよ!…絶対こんな状態のまま、家で1人になるなんて無理…」
彼女の言葉は続く。余程恥ずかしいのか、思い詰めているのか、今にも泣き出しそうだ。
「ブチャラティには絶対こんな事言えないし、アバッキオにも文句言われそうだし、フーゴには引かれそうだし、ジョルノに言うのも気まずいし…特にミスタには絶対、絶ッッ対バレたくないしッ!
ねえナランチャあぁ〜ッ!お願いッ!もうナランチャしか頼れる人がいないのよォ〜〜ッ!!!」
涙目でそう懇願されては、断るものも断れない。
『1人だと怖くて耐えられないから一緒にいて欲しい』という理由も分かった事だし、彼女にはそれ以上の考えはなさそうだ。
……そう、だから、オレだって何も"他の考え"なんて無い。
そう自分を納得させて、どうにかナランチャは頷いた。
「わ…わかったよッ!一晩ここに居りゃあいいんだろ。他の皆にも、内緒にしとくよ」
「ホントっ!?あ、ありがとう!ありがとう〜ッ!ナランチャ!!」
安堵から彼にぎゅうっとハグをするチヒロに、ああ、先が思いやられる、と少年は息を吐いた。