第3章 vagheggiare【ブチャラティ】
「ブチャラティ。今回の任務では、他に変わった事は無かったのですか?」
尋ねながら斜め前の椅子に座ったのはジョルノだ。
すっかりギャングが板についてきた彼は、チーム内の任務にも専心している。
「ああ、特に心配するような事は何もない。
……と、そうだ。お前達、今晩の予定は空いているか?」
「予定?特に無えが…何かあるのか?」
訝しげに首を傾げたアバッキオに続き、皆予定は無いと首を振る。
「いや、実はディナーの予約を入れていてな。大通りを少し行ったところに新しくできた店があったろう、あそこの席を7名分取ってある」
「えッ!!!」
それを聞いて、全員の目の色が変わった。
「あ、あそこって確か、オープン以来大人気で連日予約が全く取れねえっつー店じゃあねえのかよ〜ッ!」
「うはーッ!どうやったんだよ、ブチャラティッ!」
ミスタとナランチャはもう既に涎が止まらないといった有様だ。
「さっき話した例の男、その店の近隣にもよく出没していたらしいんだが…振る舞いも酷い上に、他の客にも度々迷惑をかけていたらしくてな。店側もほとほと困っていて、何とかして欲しいと相談されていたんだ。
それで今回、無事に解決した礼をどうしてもさせてくれと言うんで、お言葉に甘える事にした──という訳だ」
「なるほど、そういう事か」
「それで僕らの席まで取ってくれたんですか、そりゃあ楽しみだ」
笑顔を見せるフーゴを前に、一瞬チヒロと2人で…という考えがよぎった事は自分の胸の内だけにしまっておこうと固く決意した。
「きゃあ〜ッ!すごいわ!楽しみ!」
皆がディナーに何を注文するか相談し始める中、よほど嬉しかったらしく、チヒロは彼に飛びついて喜ぶ。
「グラッツェ!ブチャラティ、大好きよ!」
「………ああ、オレもさ」
"親愛"のハグを一身に受けながら、きっと言葉の真意は通じないと知りつつも…早鐘を打つ鼓動をひた隠し、ブチャラティはそう返すしかなかった。
END