第2章 炊き込みご飯
「姉ちゃん! 今度の遠足かわいい弁当がいい!」
ある日の放課後、鬼龍くんの妹のちはるちゃんを小学校まで迎えに行ったときのことでした。
「どうしたの、いきなり」
「だって、みんなのお母さんお料理上手なんだもん」
「お兄ちゃんもお料理上手だよ?」
小学生の頃、私はどうだったかな。
――― あや! 遠足のお弁当は楽しみにしてろよ! ―――
お母さんはもういなかったからお父さんが遠足とかのお弁当を作ってくれたけど…
――― みぃちゃんのおべんとう、うつくしい…っ ―――
――― すげぇな… ―――
気合が入りすぎて遠足でみんなから注目浴びて恥ずかしかったな…おにぎりやおかずも海苔とかで顔作ってたりして食べづらかったのを覚えてる。
あ、あと運動会のお弁当は更にグレードが上がっててすごかったな。
「姉ちゃん、どうかした?」
「ううん、なんでもないよ。ちはるちゃん、お弁当のおかずは何がいい?」
「えっとね、からあげでしょ、ウィンナーにぃ、卵焼きにぃ…」
とりあえずお弁当のおかずのリクエストを聞きながら、スマホにメモしておいた。お弁当に関しては鬼龍くんと要相談かな。
お弁当に可愛さはやりすぎるのはともかく、いろどりがあって食べるのが楽しめるものがいいよね。
「鬼龍くん、今度のちはるちゃんの遠足のお弁当だけどどうしたい?」
「いきなりどうしたんだよ。作るに決まってるだろ?」
「それがね、ちはるちゃんから可愛いお弁当がいいってリクエストがありまして」
「可愛いか…」
夜、ちはるちゃんを寝かせてから遅くに帰ってきた鬼龍くんに遠足のお弁当のことを言うと、腕を組んで悩んでいた。
「そういや、昔水瀬の父ちゃんが作った弁当すごかったな…」
「それをもらった側からいうと、可愛い顔ばかりあって食べづらかったよ」
「……」
「あとあんなに気合入れられると注目浴びて食べづらかったよ」
「……お前、完食してたじゃねぇか」
「仕事で忙しかったお父さんが頑張って作ったのに食べないわけにはいかないよ」
仕方がないじゃない。仕事で日々忙しかったお父さんが運動会や遠足には気合を入れてお弁当を作ってくれてるのに文句を言ったら罰が当たるし、申し訳ないと思っていたんだから。