第4章 グラタン
「お疲れさまでした」
バイトが終わって、裏口から出て駅に向かって歩いていた。
「水瀬?」
「あ、蓮巳くん。お疲れ様です」
「あぁ…こんな時間に帰ってるのか?」
「バイトしてるんで」
「なるほどな…だが、夜道を一人で歩くのは感心せんな」
歩いていたら、蓮巳くんに会った。聞いてたら蓮巳くんは生徒会の仕事で帰りが遅くなったらしい。蓮巳くんも駅に向かっているからそのまま一緒に歩いていた。
「親は迎えに来んのか?」
「2人とも来れないかな」
「それならもう少し時間を考えろ」
「いつもはもう少し早いんだよ? たまたま長引いちゃって」
蓮巳くんに夜歩きの危なさを説教されてしまった。鬼龍くんから聞いてた通りだな。
「ねぇ、蓮巳くん」
「なんだ?」
「鬼龍くんさ、そっちではどう?」
「どう、とは?」
「学校や仕事での鬼龍くんはあまり見ないから」
「先日の学院祭の準備では一緒だったろうが」
「あの時は斎宮くんもいたし、仕事より幼馴染全員集合って感じだったから」
思いついた話題が鬼龍くんのことだった。アイドルとしての鬼龍くんはたまにドリフェスのステージを見るくらいで、まるで遠く離れてしまってる印象がある。でも、家で会う時の鬼龍くんは私が知ってる鬼龍くんで…
「そうだな…とても頼りになる。その分苦労をかけてしまって申し訳ない」
「鬼龍くんはそんなの気にしてないと思うよ、むしろもっと頼れって言いそう」
「さすが幼馴染といったところか」
「そんなことないよ、私にだってわからないことがたくさんあるよ」
今だってわからないことだらけだもの。ずっと一緒にいたけど、中学は一時期疎遠になっていたし、今みたいに話すようになったのは中3の頃だった。多分鬼龍くんも私のことわかってないと思う。
「それにしては仲良さそうだったが?」
「よく鬼龍くんの家にお邪魔してるからかも。家基本私1人だからご飯食べに来いって連れていかれるから」
それに今の時間もいつまで続くかわからない…
――― 今度の日曜には一度お家に帰れるから、楽しみにしててね ―――
――― 今日は早く帰って一緒にご飯作るからな! ―――
いつだって…手を伸ばしかけたら…
「水瀬、水瀬っ」
「…っ、なに?」
「駅に着いたぞ。貴様、どっちだ?」
気づくと、駅に着いていた。