第3章 サンドイッチ
「つーわけで、これ水瀬からの差し入れな」
「…いきなり部室に乗り込んできたかと思えばわけのわからないことを言うね」
翌日、朝起きてから水瀬の家で切り分けて入れた弁当箱の一つを斎宮に届けた。
斎宮が作業しだしたら寝食を忘れることがあるのは俺も水瀬もわかっていることだったので持っていかない選択肢はない。
「水瀬なりにお前のこと心配してんだよ」
「……」
「あいつはアイドルでもプロデューサーでもねぇんだ。気にすることねぇだろ」
弁当箱を差し出せば、斎宮は不承不承受け取った。
「僕としては、みぃちゃんの方が自分のことを考えるべきだと思うけどね」
「あいつは俺らよりしっかりしてんだろ。俺も頼りっぱなしだし」
「君の眼は節穴のようだね…」
「は?」
「ふんっ、君とこれ以上話すことはないよ。作業の邪魔だ。さっさと行ってくれるかな」
斎宮に言葉の続きを聞こうとしたが、手芸部から追い出された俺はそれを聞くことができなかった。
「まったく…どうしてあの子の方が脆く儚いことに気づかない」
『仕方ないわよ、宗くん。あやちゃんが特にあなた達に自分の弱いところを見せたがらないのはよくわかってるでしょ?』
「それでもあの可憐な子に乱暴者には勿体なさすぎるよ。いったい何が良くてあんなのに惚れたのやら…」
『そんな二人のことが大好きなくせに』
結局言いたいことはわからないままだった。
だが、俺はそれについてあまり気にせず目の前のやることを行うべく目的地に向かった。
「はぁ…美味しいね、困ったことに」