第9章 ~明智光秀~ end.
二人手を繋いで歩いた先は、光秀さんの御殿。
そしてそのまま、光秀さんの部屋へ。
「そこで待っていろ」
光秀さんは、部屋の奥に入る。
私は光秀さんの匂いが染み込んだ部屋で、思いっきり息を吸った。
それだけで……光秀さんが身体の中に染み込んで行くみたいで……うっとりしていると
「今宵の宴は、これを着ろ」
「え?」
ポンと投げ渡されたのは……
着物!?
思わず光秀さんの顔を見る。
「広げて見てみろ」
「あ……はい……」
な、何!?これ……どういうこと?
でもさ、この着物……すごく高価なものだよね……
手触りが……正直、今まで触ったことがないくらい……
ドキドキしながら、私は座って畳の上に着物を広げた。
「あれ……この柄……」
「桔梗。俺と同じだ」
それって……
「なんだ、そんな顔をして。嬉しくないのか?」
光秀さんが私の頭を撫でながら横に座って、顔を覗きこんできた……
「あの……これって……どういう……」
「解らないのか?男が家紋と同じ柄の着物を贈る意味が……」
光秀さんの、綺麗な指先が私の頬を撫でてきた。
少し冷たい指先が……
「あの……本当に?」
「それも演じているのか?」
「え?」
今の意味がよく……
「お前は何をいつも隠しているんだ?」
…………
そ、そうか……人の心を読む光秀さんには隠せないのか……
「だが、俺への気持ちは本物だろう?」
下を向いた私の顔を上に向かせ、ニヤリといつものように頬笑む光秀さんと、目があった。
「それは隠しきれていなかった……という事ですか?」
「あぁ……」
光秀さんの顔が近付いてきた……