第9章 ~明智光秀~ end.
「え、え……あの……」
「俺が直してやろう。政宗、きょうこを借りるぞ」
そう言って私の顔も見ずに、手を引っ張って歩いて行く。
え?ど、どこまで行くのっ!?
近くの部屋の前を通りすぎた時、後ろから
「光秀っ!それ以上、着崩すなよ!」
楽しそうな政宗の声が聞こえてきた。
光秀さんは、片手を軽く上げるとそのまま城門の方へとスタスタと歩いて行く。
「あ、あの光秀さんっ……どこへ……」
光秀さんはピタッと立ち止まると、くるっと私の方を振り返り、衿元をピシッと直してくれた。
あ……直してくれた……って、これぐらいだったら、私でもすぐに直せたのに……
「あ、じゃあ……」
もう用はないよね、と思い、私は政宗の元に戻ろうとしたら
「一緒に来い」
「へ?」
思わず間の抜けた返事をした。
すると光秀さんは、さっきまで手首を握りしめて私を引っ張っていたのに
すっと私の手をとると……
指を絡めて……手を繋いできた。
「行くぞ」
「えっ……」
……頭が混乱している。
な、何が起こっているの?
いわゆるアレよ!アレっ!!!
『恋人繋ぎ!!!』
ドキドキしながら、足の長い光秀さんの後ろを着いてパタパタと歩く。
いや、着物ね、歩きにくいのよ……
すると今度は立ち止まって、私を見下ろすと
「ふっ……」
あ!足の長さの差に気付いて笑ってるな!!!
「あの……もう少し……」
「時間はある。のんびり行くか……」
繋いだ手を、私の目の高さにもってきて
ニヤリと笑う光秀さん。
太陽の下で見る光秀さんの笑顔……
心臓を射ぬかれた気がした。