第7章 ~徳川家康~ end.
「家康、お前にきょうこをやろう」
「は?」
「2度は言わん。聞こえていただろう?」
腕を組んだ信長様が、にやりと笑って俺を見た。
「いりませんよ。信長様の御手付きなんて」
「ほう、気付いていたのか」
またにやりと笑う信長様。
「当たり前ですよ、そんなの……」
「いつもきょうこを見ていたから、そうだろう?家康」
信長様にぴしゃりと言い当てられる。
そうだ、見ていた。
だからすぐに解ったんだ。信長様との間に何かあったこともね。
「……きょうこは、物じゃありません」
「ははっ!お前達は似た者同士だ」
今度は信長様が大きな声で笑った。
「どこが……」
いつも明るく笑うきょうこは、太陽そのものだ。
だけど俺は、その太陽を真っ直ぐに見ることはできない。
つい、目を細めて……俺には……きっと素直に真っ直ぐ育ったきょうこは、眩しすぎたんだ。
「きょうこもお前と同じように苦しんでいる。お前ならきっときょうこの心を解放できるはずだ」
「は……?」
「なんだ貴様、ずっと見ていたわりに上っ面だけを見ていたのか?」
「……」
言い返せなかった。
「きょうこは、俺達の知らないことを沢山知り、それすら吐き出せず苦しんでいる。そして、この時代に来る前にも何かを抱えている。
まぁ、俺も全てを曝け出すまで、はっきりと確信は持てなかったんだがな」
きょうこが500年先から来たなんて聞いた時は、信じ難かった。けど、今なら信じる事ができる。
きょうこはそんな嘘をつくような女じゃないから……
「俺が……きょうこの側にいても?」
「あぁ、家康。必ずお前の為になるだろう。まぁ……お前にくれてやるのは惜しいがな」
そう言って信長様はまた高らかに笑い
そして言葉を続ける。