第3章 ~豊臣秀吉~ end.
「きょうこ姫様」
「……はい」
目の前には、町で評判の美しい娘さんが立っている。家柄も申し分ないらしい……
「秀吉様と夫婦になられるのですか?」
赤い唇が震えて、聞いてきた。
「それは……今は……」
ハッキリと言えないよね。今さっきの約束だけじゃ……私が言葉を濁していると、赤い唇が今度はぐにゃりと歪み一言
「嘆息なさいませんように」
「え?」
たんそく?
短足?違うな?えっと……どういう意味……って聞き返せるような雰囲気じゃないしな……
よくわからないまま、私はペコリと頭を下げると、そそくさとその場を後にした。
私の後ろからは、クスクスと笑い声が聞こえてきたけど……
なんなんだろう……
城に戻ったら、三成くんに聞いてみよう。
「がっかり?ため息をつく?」
「そうですね、そのような意味ですね」
「ふ~ん……」
「何か心配な事でも?」
「ううん!ありがとう!あ、金米糖よろしくお願いね」
私は買ってきた金米糖を三成くんに預けると、自室に戻ってすぐに出掛ける準備をした。
「何が嘆息なんだろう……?」
そんな疑問を少し抱いたけど、それよりも頭の中は秀吉さんのことでいっぱいで、正直そんなことはどうでもよくなっていた。
そして約束の刻限よりもかなり早く秀吉さんの御殿に着くと、夕餉の支度を手伝わせて貰った。
ほんとは張り切って手料理!なんて振るまいたいところだけど……
元々、料理が得意じゃないうえに、この限られた食材や器具で私がどうこう出来る腕も持ち合わせていない。
だから、お手伝いをしながら教えてもらう。
まぁ、ここでは何度か料理を教わったこともあってか、皆が快く私を受け入れてくれる。
そして皆が口々に
「早く、お世継ぎを……」
って……気が早い!!!
でもね、私も今夜を期待していないわけじゃない。
襦袢も新しいのに着替えてきたしね。
ふふふ……