第3章 ~豊臣秀吉~ end.
私達は黙ったまま少し歩いた。金米糖を売っているお店の前まで来た時、秀吉さんが肩を抱いていた手を離し、そして両手を私の肩に置いた。
確りと近くで向き合う格好だ。
「きょうこ、ここで言うような話じゃないのは解っている。だけど……さっき言った言葉は本当の気持ちだ。
俺はきょうこ以外の女子と二人で過ごしたいとは思わないんだ」
秀吉さんは真剣に思いを伝えて来ている。今までは軽くかわして来たんだけど、私も心を決めたんだ。
「ありがとう秀吉さん。私も……秀吉さん以外の殿方と二人で過ごしたいなんて思わないよ」
そう伝えると、秀吉さんの目はいつも以上に垂れ下った。
「そうか、今日は夕餉を一緒に取ろう。できるだけ早く帰るから、俺の御殿で待っていてくれるか?」
「うん……」
私は返事をしながら、少し恥ずかしそうに下を向いた。そして、また上目使いで
「待ってるね」
そう言うと、秀吉さんは満足そうな顔をして
「城まで気を付けて帰るんだぞ?」
「ふふ、大丈夫だよ」
「やはり誰か使いの者を供に……」
「心配しすぎ!」
「そ、そうか……」
今度は秀吉さんが照れ臭そうだ。……想いを伝え合っただけで、今まで以上に甘やかされるんだな……
嬉しいような、照れ臭いような……
「秀吉さんも、気を付けて行ってきてね」
「あぁ。必ず早く帰る」
「うん」
お互いにそっと手を振ると、秀吉さんは走って目的の場所へ向かって行った。
私はそのままお店で金米糖を買って、城へ戻る道をゆっくりと歩いていた。