第3章 ~豊臣秀吉~ end.
だけど……賑やかな通りに入るとすぐに、町の女の子達から黄色い声が上がる。
「秀吉さま~」「今日こそはご一緒させて下さいませ!」「いえ、それは私が!」「!!」「!!」
なんだか、一歩間違えば喧嘩でも起こりそうな程の人気ぶりと言うか、取り合いと言うか……媚の売りあいと言うか……
いつもこうなると、少し落ち着くまで遠巻きに見ていたりもしたんだけど……
ごめんね?
そろそろ私も本気出すから。
私は確りと繋いでいた手を、パッと離した。
「え、きょうこ?」
少し慌てた声を出す秀吉さん。
その声を聞いた瞬間に私は……
秀吉さんにしがみつくように、ギュッと腕を絡めた。
そして顔を秀吉さんの耳元に寄せ、囁いた。
「お願い……二人だけがいいの……」
それを聞いた秀吉さんは、絡めていた腕をスッと抜くと私の肩を抱いて、近くに引き寄せてくれた。
「みんなすまない。俺はきょうこと過ごしているんだ」
秀吉さんがそう言い切っても、町娘達は少し退いてから……口々に今だけだと言わんばかりに呟く。
「だったら、明日にでも……」「ね、みんな……」
だけどそれを聞いた秀吉さんは
「いや、明日も明後日もない。俺はきょうこ以外の女子と過ごすつもりはないんだ」
ハッキリと皆に宣言してくれた。
本当に男気の溢れる、だけど優しくそして愛しい人。
私は秀吉さんに頭を預けると、自然と甘い雰囲気がその場に漂った。
そうなると町娘達は無言で立ち去るしかない。
ごめんねーほんっと、ごめん。
でも、私もこの人がいいの。
だから譲れないんだ。