蝶よ花よ〈甘い蜜に誘われて〉(気象系.信号トリオ.BL )
第614章 追憶のキミ2-7
智side
雅紀くんと、潤くんがお互いを想い。その視点で回顧するのは仕方ないとオイラは思うんだ
和也くんも同じ想いだよね
和也side
相葉と、松本先生の想いは分かる。しかし、俺は翔若様の立場から回顧する訳で……
それは智さんも……
翔若様……
翔若君……
ご自分と異母兄との跡継ぎ問題に、心痛めて涙されていた
その姿を思い出すと可哀相で
和也side
俺は、翔若様が雅紀様の住まいである、西の対屋に迷い困れた日の事を思い出していた
和也『翔若様! 良かった…… いらっしゃった。翔若様! 何故こちらの対の屋 《タイノヤ》の方におられるのですか?』
翔『昨日無くした蹴鞠 《ケマリ》を、探していたらこちらの対屋で見つけたのだ……』
和也『翔若様! そのような事、我々家臣に……』
翔『和也…… 北の対屋に戻りながら話そう。私は 己の事は己で出来る様になりたいのだ。何でもかんでも家臣任せにしていたら、将来生きて行くのに困るではないか』
そうおっしゃられた、翔若様の気持ちが切なくて……
-北の対の屋-は翔若様の住まいで
私は、十六で。翔若様十七の年。◎◎国…… イヤ…… 将来日の本の国を治める器量と、才覚をお持ちのお方なのだと思ってお仕えさせて頂いていた
『櫻の方様、側室の蘭の方のお産みになられた雅紀様に、この国を治めさせる等…… 正室の、櫻の方様のお産みになられた、翔若様が継がれるのが筋なのです! 何を気弱な事を……』
『内大臣…… 兄上…… そのような事軽々しく口になさるのは、辞めて下さりませ……』
翔『和也…… ここにも愚かな妄執に捕らわれた者がいたな…… 私は身体が弱いゆえ…… 雅紀殿が継がれる事が…… 母上も私が継ぐ事に拘っては居られないのに…… 』
和也『翔若様……』
家臣の…… 正室の櫻の方様に、側室の蘭の方様の…… 二人の兄の愚かな争い…… それより翔若様が、少しばかりお身体が弱いという事をお嘆きなのが…… 辛かった……美しくて、気高く、 賢い翔若様の嘆きが
そして。翔若様が出逢われた二十の左官職人。智殿と出逢ったんだよな