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蝶よ花よ〈甘い蜜に誘われて〉(気象系.信号トリオ.BL )

第668章  涼やかな風.美しき優しい華(花)たちへ 2-7


 パクっ。

 翔「あ? 何を?」

 和也「あ? 何を? って……翔ちゃんの分の肉じゃがに味付けしました?」

 智「翔ちゃんの分の肉じゃがだけ、砂糖を忘れてんじゃねぇかと思って……」

 翔「味付けなんて……」


 そう、デジャヴ。

 あの日翔ちゃんは、 おかゆに塩気の味付けをしないで食べようとした。


 今回は。

 オイラとカズ。

 俺と智。


 の肉じゃがには、 砂糖を入れて味を調えたけど…… 味を整える前に……自分の分の肉じゃがをお皿に取り分けたんだ。



 和也.智「どうして! 翔ちゃん? また味がしなくなったの?」

 そんな…… 微妙な味覚が戻ったって。最近では『戻った。』って、言ってたのに……


 翔「イヤ……みりんや、酒は入れてるから……しょうゆも」

 智.和也「答えになってないよ! 何で砂糖だけ入れないの?」


 ジっと俯いている翔ちゃん。 しばらくして、その綺麗な大きな瞳に涙をためると。


 翔「気分的なもの……味覚に変化は無いのかもしれない。けど、甘味、塩気。 微妙に感じる気がする。 今日の肉じゃがみたいに、これまで作ってきた経験で、たとえ味覚が微妙でも記憶が味を補ってくれる……」

 和也.智「翔ちゃん……」

 なんてって言って良いか…… 切なくて。苦しくて。


 翔「 いざ、夢だったお店をスタート出来る事が決まって。プレッシャーかな? お店に出すケーキの施作をしながら、この味で正解なの? 日によって感じる味が微妙に違うんだよ? 頑張ろう。という気持ちはあってもそんな状態の人間が作るケーキなんてさ。お客様にお出ししていい訳ないじゃん? そうでしょ? カズ? サト?」


 翔ちゃん…… 嗚咽を…… 必死に泣くまいって……可哀想で…… オイラ。

 翔ちゃん…… 嗚咽を…… 必死に泣くまいって……可哀想で…… 俺。


翔「美優花、涼優花、風優花に『……どうかな? 苺のショートケーキを作って来たんだけど、美味しいかな? どこか気になる所はない?』 聞いても答えてくれないし……昼間は、三人に『頑張るからね!』って誓ったけど、また不安が襲って来て……」


そうか。翔ちゃんはあの日。美優花さん、涼優花ちゃん、風優花ちゃんに辛い思いを打ち明けていたんだね……




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