第2章 賢者の石
ポッター家に生まれた双子は何故だか、姉だけが誰からも愛されずにいた。
両親が殺されたあの日にダンブルドアによって母方の親戚のペチュニアが嫁いだバーノン家に預けられたが、何不自由なく育ててもらっても愛情の欠片もなくただ育った。
だがジュディスには特にこれと言って落ち度はなく、齢五つにして叔父叔母の朝食を作るのも食器を洗うのも洗濯物を干すのも自分がしていた。
逆に何もしない弟のハリーは二人からも息子のダドリーからもよく嫌われていたが、かと言ってジュディスが好かれていたかと言うとそうでもないのだ。
ジュディスは自分が持つ魔法の力には気づいていたが、まるで常人かのように振る舞った。
バーノン夫妻が、あるいはその息子がこの力を見てしまった場合、魔法使い嫌いな彼らはジュディスを阻害するだろう。今までの普通の接し方じゃないハリーにするような接し方をされてしまう。あの両親の娘なのだから、疑われても仕方のないことだが。
ただ、蛇とは時々話をしている。この暮らしに不自由などないが、ハリーには文句ばかりなのに金持ちが来れば媚びまくるあの夫婦の言葉を毎日聞いていればストレスくらい溜まって当然だ。
勿論誰もいないところで。
右目は普段から髪で隠しているため見えにくさは残るがそれでも、オッドアイの娘など魔法族の者の目から見ても奇怪に映るだろう。
常人を振る舞った結果、ハリーはバーノン一家に対する怒りのあまり魔法の力を制御できずに異常者認定され、階段下の物置部屋が与えられた。
ジュディスには行儀がいいとダドリーが使っていた古めの部屋を与えられた。女の子なのもあって基本は新しいものを、使えるものはお古だけどと譲り受けあてがってもらった。
腕の痣や色の違う目を見られて気味悪がられたが、不快にさせないように気を遣って行動していたら特に気にされなくなった。
ストレスは溜まるが、これでも夫妻には感謝しているのだ。
赤子だったとは言え無駄な消費は控えたいはずだ。それを、親戚だからというだけで無償で育ててもらったのだ。
ダンブルドアの置手紙があってそれが叶ったのだろうが、あの爺が面倒を見てもよかったのではないかとジュディスは考えていた。
脳裏に焼き付くあの死の光景を思い出すたびに考えた。
あれはどうにかなったのではないかと。