第2章 賢者の石
『なぁに?罵倒が嫌なら少しは動いたらどう?どうして生きていられるか本当にわかってる?夫妻が私たちを拾って食わせてくれたおかげなのよ?ダドリー坊ちゃまがいらっしゃるのに』
夫妻が拾ってくれなければ死んでいたのは事実だが、実際は感謝しているだけで尽くす気はこれっぽっちもない。
ハリーは軽蔑の眼差しを向けて一人黙々と食事を始めた。
そんなハリーをよそに、ジュディスも食事を始めた。
...
食事を終えてやってきたのは動物園。
ダドリーはハイテンションになっていた。そのダドリーを付き添うようにジュディスが後ろを歩く。
腕に痣のあるジュディスは、ペチュニアに腕の痣が見えない服を見繕って着せてくれた。夫妻もこんな痣のある娘を連れて異常者に視られたくはないだろう。懸命だと思う。
動物園についてからしばらく歩き丁度爬虫類のルートに出ると、ダドリーは最初大蛇のゲージの前で大きな声でガラスを叩いた。動いてほしいらしいが反応は一切なく、ハリーが論するとダドリーはつまらなそうにゲージから離れていった。
かわってハリーがその蛇のゲージの前でぼそぼそと会話を始めた。見るからにおかしい光景を誰も気に留めることはなく、会話は続くように思えた。そんな時、動き出した蛇を見たダドリーはハリーに体当たりをして場所を奪った。
衝撃で転んだハリーはダドリーを睨みつけた。
相当ご立腹なようだ。睨みつけた瞬間、大蛇が入っていたゲージのガラスが消えた。ダドリーは勿論ゲージ内の水に濡れる。大蛇は這い出ると、ハリーにお礼を言って外の世界へ出て行った。
気づけば蛇がいたゲージのガラスは元に戻っていて、ダドリーはゲージ内に隔離された。
勿論だが夫妻はご立腹。わなわなと怒りに震えながら、ハリーは一週間食事抜きにされた。
後に蛇の脱走はニュースになったが、開園中どうやって脱走できたかは依然として不明なままだった。