第2章 賢者の石
それは毎朝の事だ。
『おはようございます。叔父様、叔母様』
早朝5時には起きて朝食と飲み物を用意する。
優秀な人種と自負する夫妻にとって遅刻なんて到底あり得ない。
遅刻なんてさせた暁には私も物置部屋行き確定だろう。
流石に弟とあんな狭苦しいところで過ごしたくはない。
『今日の朝食はハムとチーズをのせたトースト、枚数はお好みです。ポテトサラダ、コーンクリーム。飲み物は珈琲、紅茶、ホットミルクからお好みでお選びください。』
まるで召使のようだと思う事だろう。
だが仮は返すべきだとジュディスは考えていた。
親戚で、両親が殺されているとは言えども育てねばならない義務など夫妻にはなかったからだ。
であらば、これは仮だ。
ならば少しでもやれる事はやるべきだ。
『坊ちゃま、坊ちゃまも起きてください。飲み物はホットミルクでよろしいですか』
目を擦りながら起き上がるダドリーに、蜂蜜を垂らしたホットミルクを差し出す。
流石に着替えは自分でやってもらっている。正直言ってあんな身体見たくない。あっちも見られたくないだろうが。
と言っても衣食住の代わりにはまだ遠いだろう。
ペチュニア「いつも悪いわね、ジュディス」
『いいえ叔母様、私たちは叔母様方の実子ではないのですから、このくらいは当然です』
ペチュニア「比べてお前の弟は…」
『あれは言ってしまえば出来損ないです。自分の立場を何もわかってないんですから』
自分の弟とか関係ない。この夫妻の前ではこれくらいしなければおかしいと思われるだろう。
夫妻は呆れ気味に、階段下の物置部屋から出てくるハリーを汚いものを見るような目で見た。
ペチュニア「今更起きてきたのかい?だらしがないねぇ」
『仕方ありませんよアレでは…』
バーノン「早く支度をしろ!可愛いダドリーの誕生日を台無しにするつもりか‼全く…姉はこんなにもしっかりしているのにどうしてお前は何もできないんだ…このグズが…」
ハリーは夫妻の罵倒を聞くと、静かに睨みつけていた。
ジュディスはそんなハリーを冷ややかな目で見つめていた。