第6章 新しい家族
「おれの見聞色と反射神経を舐めるなよー」
「貴方も私のこと舐めすぎなんじゃない?」
避けた方へフレイアが手を出すと、そこにはどこからか現れた短刀が握られていた。それを見てエルトンが慌てて体をひねる。
(ああ、悪魔の実の! 万能か!)
「おーおー、エルトンのやつ苦戦してるな」
避けきれずに腕から血を流す姿をギャラリーの端っこで眺めながら、マルコが苦笑する。
「あいつがバカなのと、今のはフレイアが上手かったね」
「話には聞いていたが、あれはなかなか厄介そうだ」
「そうでも無いよい。本人の話だと、未だフレイアは力を使うのに結構集中力がいるらしいからな……」
「つまりエルトンが油断し過ぎってこと」
レオーラとビスタも並んで甲板の様子をみつめる。先程主張した用事が嘘だとばれると、後から噛みつかれかねないため、あくまでばれない様に観戦していた。
「しかし、10歳かそこらで何度見てもよく出来ている」
「そりゃあ、現在世界最強と呼び声高い男に鍛えられてたらそうなるんじゃない?」
「努力家だしな」
何度トレーニングを注意したことか、と顔を顰めるマルコを見てレオーラが噴き出す。それを聞いてビスタは腕を組みながら笑うと、レオーラの方を見て口を開く。
「師匠の腕がたつのは一つの要因だが、その教えを実行できるのは本人次第だ」
「ふぅん……おれ剣士っていうと、真っ先にアレが出てくるから、いまいちイメージが違うのかもね」
アレと顎で指した先には、フレイアの細かく急所を狙う剣先を捌くエルトンの姿があった。
「……あいつは……特殊事例だろう」
「持ち前の運動神経と勘と反射神経で刀を感覚的に振るってるやつだからねい」
「でも勝つから強い。荒っぽいのが玉に瑕だけど……それはおれが援護するから問題ないしね」
どこか自慢げなレオーラを見てマルコが肩をすくめる。
「お前にお守りをしてもらってるうちは、まだまだってことだな」
「ははは、僕が好きでやってることだよ」
(それしか、僕があいつにしてやれることはないから)
本音を舌の上で転がしながら笑うレオーラの様子にマルコとビスタは目を合わせて溜息を吐いた。