第6章 新しい家族
「最初に見た時より明らかに動きが良かったから、手合わせする楽しみが増えたな」
「ブランクあるから、本調子に戻ったらもっとスピード出せるよ」
「へェ……おれと戦ってた時は本調子じゃなかったってか」
目を細めて微笑むエルトンにフレイアの肌がピリつく。
(この人、本当に掴み所がないというか……)
冷や汗をかくフレイアに、エルトンは声を押し殺して笑う。
「そんな顔すんなよ。一応お前の2倍生きてるんだから、少しはおれだって怖い顔できるんだぜ?」
「ふふ、エルはその怖い顔を持続させるの下手だけどね」
「うるせェ」
「ねェ、レオーラは何処にいたの? 戦ってる時に全然顔を見なかったけど」
他のみんなは一度は必ず見たのに、と首をかしげるフレイアに全員が顔を見合わせて吹き出した。
「お前、散々フォローされといて」
「え? フォロー?」
「時々不自然なところで敵がやられたりしなかったかい?」
「ああ、なんか次に倒そうと思ってた敵とか死角にいたのがいつのまにか……」
「アレやってんのレオだぞ」
「ええ!?」
得意そうな顔でレオーラの首に手を回すエルトン。「なんでお前がそんな顔するの」と鬱陶しがるレオーラを見るフレイアの目は丸く見開かれていた。
彼女は戦ってる最中、相当移動を繰り返していた。しかしそのフォローは何処でもされていたはずだ。
「前線でエルトンが暴れてレオーラがフォローするってのが二人の常套戦術だったからねい」
「カバー範囲広すぎない?」
「まァそれにはカラクリがあるんだが……それは本人が話したくなったら話すさ」
「ふうん」
ビスタの意味深な言葉にフレイアはそれ以上の追求はやめて、戯れ合う幼馴染コンビを眺めた。誰しも触れられたくないことはある、ということは十分理解している。
「……フレイア、明日からエルトンに付いて回っていいぞ」
「え、本当?」
突然の鶴の一声にフレイアが鶴……もといマルコを見上げると、肩を竦めて肯定を返された。
「あれだけ動ければ自然治癒でもう治るだろい。定期的に経過観察はするから、多少の自由行動は許す」
「はーい!」
「ただし最初の仕事は医務室の扉の修繕だよい」
「……はい」