第6章 新しい家族
「さて、おれが何で怒ってるか分かるか?」
デジャヴを感じる光景にフレイアは黙って床に正座をする。
「と、扉を壊したからですかね」
「……」
「言いつけを破ってすみませんでした」
無言の圧力に早々に白旗をあげて謝ると、マルコが持っていたバインダーで彼女の頭を叩く。
「お前さんは怪我人って自覚をしろ!」
「いったぁ……怪我人への対応じゃないよこれ」
「馬鹿にはいい薬だよい」
「まーまー、マルコ落ち着けって」
自分の怪我に包帯を巻きながら笑うエルトンをマルコが睨むと、早々に彼も白旗をあげて治療に専念する。
「あと敵味方の区別がついてねェのに広範囲斬撃の技なんか飛ばすんじゃない! 危ねェだろい!」
「ああ、それは本当にごめんなさい。ちょっと久々の戦闘でテンションが」
「ちょっとじゃねェ! お陰で怪我人増えてんだい!」
「だから手当てするの手伝ったじゃない!」
「そういう問題じゃねェよい!」
ヒートアップする二人の間で、触らぬ神に祟りなしとばかりにエルトンが珍しく大人しくしていると、小さくノックをして壊れた扉の陰からレオーラとビスタが顔を出す。
「マルコー、全員の点呼も終わったよ。そっちはどう?」
「反省の色なし」
「反省してるって!!」
「まァ許したらどうだ? オヤジも笑ってたぞ」
ビスタの言葉にフレイアはあからさまにホッとした様子を見せる。気の抜けた様子のフレイアに「おれはまだ怒ってる」と殺気を向けるマルコをエルトンは後ろから飛びついて宥める。
「まーまー、そんなに怒るなってマルコ」
「フレイアの斬撃の一番の被害者がこう言ってるんだし、許したら?」
「お前らが甘やかすから厳しくしてんだろい」
レオーラの言葉に溜息をつきながらも、剣呑な雰囲気を引っ込めたマルコにフレイアは今度こそ全身の力を抜いて安心した顔を浮かべる。
「それにしても、扉破るわ登場から派手な攻撃するわで意外と大胆だなフレイアって」
「剣聖もよく船壊しにかかるし、やっぱり血筋なの?」
「いや、単に【湖月】の攻撃範囲が広くてそうなっちゃうだけだから。お父さんは個人的に戦いたい相手がいない時しか船沈めないし」
ヒラヒラと手を振るフレイアを見て、ビスタはニヤリと笑った。