第6章 新しい家族
「おーやってる」
甲板まで扉一枚というところでフレイアは立ち止まって、扉についた小窓から外を伺う。多くの人間が入り乱れており、未だこの船に慣れていないフレイアには敵味方の区別が難しい。
(このまま出て行って味方を切るのは嫌だな……どうしよ)
引っ込むのも嫌だなぁと視線を走らせていると、身体能力の高さを生かして、不規則な軌道で長刀を振るうエルトンが目ついた。
(やっぱりシャンにちょっと太刀筋似てるのよね……)
船から落ちる前、最後に見た必死の顔を思い出すとズキリと胸が痛む。悪魔の実を食べた時の一件といい、短期間で心配をかけすぎている自覚は十分ある。
(……元気にしてるかな。シャンとバギー)
あの二人のことだから気にせずいつも通り過ごしていると思うが、それはそれで寂しい気もする。予想以上に自分が弱っていることを再認識して自嘲すると、フレイアは意識を甲板に戻した。
今出来ることは、ここで胸を張って立ち続けることだけだ。
「あ」
甲板にいた見知らぬ男と一瞬目が合った。下卑た笑みを浮かべながら近づいてくるあたり、味方ではなさそうだ。
(ああ、マルコに怒られるだろうなァ)
しかし寄ってくるなら相手をしなければ。心の中でマルコに謝りながらも、フレイアは甲板に勢いよく飛び出した。
扉一枚隔てていただけ。ただそれだけの違いなのに、戦特有のピリピリした緊張感が一気に全身を包んだ。ゾクリと背筋に電気が走ったような感覚とともに、無意識に刀の柄に手が伸びる。恐らくここにシャンクスとバギーがいたら「父親そっくり」と呆れたであろう笑みを浮かべながら、フレイアは自分に武器を向ける男に向かって刀を抜いた。