第6章 新しい家族
「えーと、衣類の他になんかいる?」
「本が欲しいくらいかな」
「本ならレオとかマルコが結構持ってるぞ」
「えっと、百科事典とか物の構造がわかるような本が欲しいんだけど」
「ああ、モノ作り的な本なら僕が持ってるよ。百科事典はないから、それだけ買おうか」
買うものをリスト化しながら街を歩く三人は、マルコの見立て通り街の人間に微笑ましそうに眺められている。落ち着きのないエルトンの襟を掴んで引き止め、逸れないようにフレイアに自分のズボンを掴ませているレオーラは兄というより父親気分を味わっていたが。
「そんな動き易さ重視より可愛い服着ろよ」
「剣術の邪魔でしょ!」
「えー、女の子なのにー」
「エルトン邪魔!!」
ヒラヒラとしたフレア素材のワンピースを持ってフレイアを追い回すエルトンを、レオーラはぼんやり眺める。
(一回り違うなんて誰も思わないなこれ)
「レオーラ、助けて!」
「レオも可愛い服着せたいよな!」
「……ま、1枚くらい持っておいていいんじゃない?」
「ほら!」
「レオーラに裏切られた」
ショックだという顔をするフレイアを見て、レオーラはごめんねーと軽く手を合わせる。
「いいじゃない。僕達のお金だから、少しくらい口出しても」
「それは、そうだけど」
正論を言われて口籠るフレイアを見て笑みを深めると、エルトンの頭を軽く叩く。
「でもお前は五月蝿いから少し静かにしろ」
「はーいお母さん」
「うるせェ」
「……仲良いわね。幼馴染?」
買うと決めたものをカゴにいれながら尋ねると、二人が同時に肯定の意を示した。
「元々、おれ達はおれ達の海賊団を組んでたんだよ」
「こいつが船長で僕が副船長ね」
「え……」
「おい、意外って顔したな今」
失敬な、と不貞腐れた顔をするエルトンを見ながらフレイアが呆れた色を深めると、それを見たレオーラは片目を薄っすら開いて彼女を見下ろした。
「あいつは落ち着きないけど、いざという時は頼りになる奴なんだよ」
「……二人ってロジャー船長とレイさんみたいね」
「そう? それは光栄。もっとも僕等は新世界入って直ぐにカイドウとやり合って潰れたんだけど」
その言葉にフレイアがレオーラを顔を上げると、赤い瞳と静かに視線が絡み合った。