第6章 新しい家族
青ざめるエルトンを見て、レオーラは意地の悪い笑みを見せる。
「ほらほら、いつまで遊んでんだよい」
また大騒ぎしそうな気配を感じてパンパンと手を叩くと、マルコが二人の背中を出口の方へ押し出す。
「フレイア、おれはご飯食べに行くから着替えとけよ」
「はーい」
「やだー、マルコったら大人の対お」
「さっさと出ろよい」
エルトンを蹴り出して医務室の扉を閉めると、マルコがレオーラを見上げた。視線に気付いて彼が糸目を軽く持ち上げて首をかしげると、マルコは不思議そうに口を開く。
「……お前さん、あれが着れるくらい小さかったのかい」
「はは、意外? あいつと2人で船出した時は160なかったんだよ」
意外だねェと現在は2mを超えるレオーラを見上げるマルコの隣で、エルトンが唇を持ち上げる。
「おれ写真持ってるよ」
「さて、エルの部屋を燃やしに行こうか」
「船燃やすな!」
「おーおー、いい感じじゃん」
「あんまりはしゃぎ過ぎるなよ。レオーラ、ちゃんと見張ってろい」
「了解」
ワンピース姿で出てきたフレイアを抱き上げて騒ぐエルトンを見て、マルコはやれやれと溜息を吐いた。
(こいつは落ち着きさえあれば……)
「エルに落ち着き求めちゃダメだよ」
「人の心を読むなよい」
「顔に出てた」
クスクス笑うレオーラは「慣れてるから任せて」とマルコの肩を叩いて、エルトンの手からフレイアを奪った。
「ほら、行くよ2人とも」
「はい」
「お前、2番隊は?」
「2番隊よりエルの手綱握る方が優先だってオヤジが」
「エルトン、私より子供扱いされてない?」
「フレイアうるさい」
「日が暮れる前に帰って来いよ」
「了解」
「いってきまーす」
船に残るマルコに手を振りながら、三人が降りていく。
(兄弟と言われたらそう見えるねェ……)
大人二人に挟まれて歩くフレイアの背中を見ながら、そっとマルコが微笑んだ。