第6章 新しい家族
「これ買い物行かなくていいんじゃねェの」
「あまり大きなものは作ったことないから、刀作りもチャレンジなの。体力も戻りきってないから刀以外は買わせて」
「成る程な。でも本当すげェな。な、もう一回」
「怪我人を玩具にするなよい」
フレイアの肩を揺らすエルトンを「子供か」と言いながらマルコが叩く。
「……エルトンって幾つ?」
「歳か? 22だぞ」
「……」
無言で瞬きを繰り返すフレイアの前でエルトンが首をかしげる。その背後で声を上げて笑うマルコが机をバシバシと叩いた。
「どう見てもティーン……」
「うるせェな! 童顔なだけだろ!」
「落ち着きのなさもだろ」
「ウッ」
マルコ酷いと言いながら部屋の隅でエルトンがいじけていると、勢いよく扉が開いて彼の頭を直撃する。
「あ、ごめん」
「レオーラ……お前わざとだろ……」
「えー、なんのことー?」
顔をおさえてのたうちまわるエルトンを無視して入って来たレオーラはわざとらしく笑う。
「いつもノックするくせに、よく言うよい」
「ハハ、偶々でしょ」
「レオーラーー!!」
「はいはいごめんね。拗ねてるガキがいたから思わず揶揄いたくなっちゃったんだよ」
鼻を抑えて飛びかかってきたエルトンを軽くあしらうと、ご飯を食べ終わって薬を飲んでいたフレイアをみてレオーラが口を開いた。
「もうすぐ島に着くらしいから準備しておいてね」
「はーい。といっても私の服、これしかないから準備も何もないけど」
これ、といいながら自分の来ていたブカブカのシャツを摘むと、レオーラが紙袋をポンと投げる。
「これ、なんとか着られたりする?」
「……なんでレオーラがワンピースなんか持ってんだよ」
紙袋の中を見て真顔になったマルコにレオーラが肩をすくめた。
「前に賭けで負けて女装させられた時のやつ。船出したばっかりの時は、僕結構小さかったから」
「あー、覚えてる覚えてる。めっちゃ男釣れてビビったやつだ!」
エルトンがワンピースを広げながら懐かしいなーと目を細める。彼の手からワンピースを受け取って軽く見ると、フレイアが頷いた。
「うん、ベルトで丈調整したら着れそう。ありがとう」
「どういたしまして。処分に困っててね」
「なんで捨ててこなかったんだよお前」
「お前に賭けで勝ったら着せようと思って」
「やめてくれ」