第6章 新しい家族
「おーい、また怒られてんのか」
頃合いを見計らったように入ってきたエルトンに二人は肩の力を抜く。
「怪我の調子は?」
「順調すぎるくらいだよい」
薬を片付けながら応えるマルコにフレイアは努めて明るい声を出す。
「だからもう動いても」
「あ?」
「はい」
「マルコ顔こわーい」
「お前、出禁にされたいのかい」
調子にのるエルトンに殺気を向けると、慌てた様子で持ってきたトレーをベッド脇の机に置く。
「ま、お医者さんの言うことはきいとけ」
「手のひら返すのが早いよ」
「治ったら思う存分動けるように仕事振ってやるよ」
「……はーい」
大人しくご飯を食べ始めた姿を見て、エルトンは思い出したように口を開いた。
「そういや、もうすぐ島に着くから必要なものあったら一緒に買いに行くぞ」
「借りは元気になったら返すね」
「子供が気にしなくていいんだよ。まぁ扱き使うけどな!」
「刀見に行かなきゃいけねェんだよな。いい店のある島だといいが」
「ああ、刀はいいの。作るから」
「え?」
キョトンとした二人の顔を見て、フレイアは口の中のものを飲み込んで手をひらひら振る。
「私の悪魔の実の能力で作れるから」
「お前、能力者なのか!?」
「不本意ながら」
何事もなかったように、またご飯を食べ始めたフレイアをマルコとエルトンが挟む。
「お前、よくそれで海に落ちて生きてたな……拾った命を大切にしろよい」
「な、な、能力使ってるところ見せて」
フレイアが喋られないのをいいことに言葉を続ける二人。驚いたフレイアが行儀悪いと思いながらもスプーンを振って散らす。
「何よ、珍獣じゃないわよ私」
「その歳で能力者は珍しいだろい」
「なんでもいいでしょ。なっちゃったものは仕方ないもの」
「なぁー、能力見せろってー」
「エルトン、もの食べてる人間を揺らすんなよ」
マルコが呆れて引き剥がすと、フレイアはエルトンに向けて何もない手を差し出した。二人の視線がその手に注目すると、そっとフレイアが意識を集中する。
「おお!」
「こんな感じかな」
「スッゲェ」
一瞬、手元が光ったのち、彼女の手の中にはペンが握られていた。適当な紙にすらすらペンを走らせるフレイアはどこか満足そうに笑っていた。