第5章 解けた先に交わるものもある
「……ていうことがあったんだよい」
「そう、お父さんが、ね」
「不服そうだなァ」
「別に」
医務室で再び手当を受け、ベッドに出戻りしてきたフレイアに事の顛末を話すと、どこか拗ねたような顔でそっぽを向く。そんな子供らしい顔を、白ひげとマルコは笑みを浮かべて眺める。
「お父さんの側とか、離れてるとか、そんなの私の成長に関係ないじゃないとは思うけど」
「結局不服なんじゃないか」
「だって成長は私の心持と努力次第でしょう」
「知らないところで、甘やかされてたってことだろうが」
「……」
「グララララ」
「ああ、もういいわよ! 再会したらお父さんをぎゃふんと言わせられるくらい強くなるから!」
妙に気合が入った様子で拳を握る少女をみていると、自然と笑顔が零れてきた。
(子供ってのは無邪気なもんだよい)
「剣聖の話じゃあ、グランドラインの果てまで行って、帰ってきたらお前を迎えに来るらしい」
「じゃあ最低でも年単位ね。よし、それまでに覇気は完璧にしてやる!」
「グララ、威勢のいいガキは嫌いじゃねェ」
「ねェ、私の刀って一緒に漂着してなかった?」
「いや、見てないよい」
マルコの言葉にフレイアの表情が一瞬曇る。体術も教わっていないこともないが、如何せん体格の問題であくまで一般人相手くらいにしか通じないのだ。
「刀なら次の街で調達したらいい」
「でも私、お金持ってないし」
「それならエルトンが出す。末っ子がそんなもん気にする必要ねェよ」
「末っ子って……」
白ひげの言葉に「どこ行っても子ども扱い」と唇を尖らせるフレイアの頭を大きな手が優しく撫でた。
「期限付きとはいえ、お前はこの船の一員だ。つまりおれの娘であり、クルー達の妹ってことだ」
「……お父さんとお兄ちゃん、か」
ロジャーの船に乗っている、血のつながった父と血のつながらない兄二人を思い出してフレイアが微笑みながら、無事に手元に残った母親の指輪を握る。
(家族がどんどん増えていくから、面白いね、海賊って)
海の子供たちは皆家族だね。そうして広く繋がる系譜。
「!!」
「どうかしたかい」
突然慌てた様子であたりを見渡し始めたフレイアに二人が眉を顰める。
「今の声」
「声? 誰も何も言ってねェが」
「そうなんだけど! そっか、暫く海に強制的に浸かってたから!」
「おいおい落ち着けよ」