第5章 解けた先に交わるものもある
そのまま床に頭から突っ込みそうだったフレイアを慌ててマルコが走りこんでキャッチすると「ありがとう」と力ない謝罪が聞こえた。
「お前さん、一週間は医務室から絶対出さないからそのつもりでいろよい」
「ハハ、これ乗せてもらえるの?」
「それは、これを聞けばわかるだろ?」
床に仰向けに寝かせながら、マルコが周りを見渡す。二人の健闘を称える声と、少しなら預かってもとこの船の船長に言う声が混ざり合ってる騒めきにフレイアは黙って白ひげを見上げた。
「どうやら剣聖は良い弟子を持ったらしいな」
満足そうな笑みを見せる白ひげを見て、フレイアは緊張の糸が切れたように目を閉じた。
「剣聖の弟子!? この小さいのが!?」
「弟子って呼び方は、間違ってねェが少し的外れか。この小娘は正真正銘『剣聖』ブローゾン・ファイの一人娘だ」
「はァァァ!!!?」
「なんだ、知らない奴が多かったのかい。結構有名な話だし、さっきの電話でも言ってたろ」
「オヤジは『ロジャーのところの小娘』としか言ってなかったしな」
驚いてい開いた口が塞がらない若い者達の様子を尻目にマルコは眠ったフレイアを背負う。エルトンもマルコの背で眠るあどけない少女の頭を撫でると、床に置かれたままになっていた刀をビスタに手渡す。
「悪い、かなり強いのを弾いてたりしてたから欠けてるかもしれねェ」
「いいや、綺麗なままだ。流石というところか」
「それっておれ? あの子?」
「さァどちらだと思う?」
「ちぇ」
おれだって頑張ったのになァと唇を尖らせるエルトンを白ひげが呼ぶ。
「小娘の怪我が完治したら面倒はお前が見ろ」
「了解!」
「レオーラ、お前も手伝ってやれ」
エルトンの右腕の怪我に包帯を巻いていたレオーラがその言葉に笑う。
「このバカのサポートならいくらでも」
「バカ言うな!!」
「グラララ、一応借り物だが遠慮なく扱っていいぞ。お前達も、あいつが乗ることに異存のある奴はもういねェな!?」
「ああ、問題ないぜ」
「でも怪我でもさせたら剣聖が怒って飛んでこねェかな……」
「オヤジがいれば剣聖だって大丈夫さ」
「そもそも、その剣聖が頼んできたことだろう」
浮足立つクルーを見て零れたジョズの言葉に白ひげは苦笑しながら同意する。
それは丁度フレイアが目を覚ます三十分ほど前のことだった。