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鏡面【ONE PIECE】

第5章 解けた先に交わるものもある


「おいエルトン、お前まだ手加減してんじゃねェか!?」
「嬢ちゃんいいぞ! そのままいけェ!」
「確かにあの歳でいい動きをするが、あの子の体は大丈夫なのか?」
 盛り上がる多くの者が応援や煽りを入れる中、少し離れたところで戦いを静観していたマルコのところにビスタが近寄る。
「大丈夫なもんかい。せっかく縫合した傷口が開いてきてる」
「やっぱりあの血の量はエルトンのつけた傷だけじゃないか」
「あいつ、気を遣って一発も入れてないよ」
「レオーラ、お前さん帰ってたのかい」
 突然背後に現れた栗色の髪の男にマルコが驚く。男は「さっきね」と言いながら輪の中心に目を向けた。
「まァ……何もしなくても満身創痍の子供相手じゃ仕方ないか」
 最初は白かったシャツや包帯がところどころ血を滲ませ、甲板にポツポツと滴り落ちる。それでも彼女の動きに迷いはなく、鋭く前を見据える視線は曇りない。時折苦しそうに眉間にしわを寄せても、うめき声一つ上げない姿に盛り上がっていた面子が少しずつ心配そうな声を上げ始めた。
 エルトンも気を抜くわけにはいかないながら、ちらちらと白ひげのほうを伺っている。
(え、まだストップかけないのかよ!? もうマルコのドクターストップでもいいから誰か止めろよ)
 しかし、皆の心配をよそにフレイアは自分のクリアな思考に少し驚いていた。
(右手が上がらなくなってきた。体調は最悪。でも、何故か動きはよく見えてる。避けるだけならいくらでも出来そうなくらい……でも、逃げてちゃ勝てないものね)
 自分の体ではもう攻められる隙を伺う時間が惜しい。そう判断したフレイアは、少し下がって刀を構え直した。
 今までと違う構えにエルトンが警戒を強めた瞬間、フレイアが不規則なステップを踏みながら加速してきた。
【鏡葉】
 彼女の持つ刀が五本ほどに増えたようにすら見える高速斬撃を、エルトンは捌きながら横っ飛びで避ける。間に合わなかった右腕を切られて舌打ちしていると、一瞬怪我に気を取られた隙を見逃さずフレイアがもう一度と刀を握りなおす。
「やめェ!!」
「オヤジ」
「っは、はァ……」
 船中に響き渡るほど大きな白ひげの声をきいて、エルトンはほっと息を吐いて甲板に座り込んだ。フレイアもずっと気を張って抑えていた呼吸を乱して、気が抜けたようにその場に倒れこむ。
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