第5章 解けた先に交わるものもある
力強く叫んだ彼女の言葉に、周りにいたクルーの方が反応した。何を言ってるんだという馬鹿にしたものから、女が乗るのかと面白がるようなものまで多種多様な声が甲板を包む。当の本人達はジッと見つめあったまま動かない。
暫くして白ひげが軽く酒を煽って沈黙を破る。
「この船に女の戦闘員は乗せねェ」
「ロジャー船長が言ってたから知ってます」
「じゃあおれの返事は分かるだろうが」
「予想は出来てるけれど、受け入れるかはまた別でしょう」
その返事に白ひげが目を細めて彼女を見下ろした。周りにいた若い者達が数歩下がる程の強い威圧感ながら、フレイアはここが正念場だとばかりに足に力を込めて彼の視線を受け止めた。
怯えているわけではなく、かと言って睨み返すわけでもなく、ただ受け止めて溶かし込むような澄んだ瞳を向ける。必死に張った虚勢を誤魔化す為に敢えて力は込めなかった。自分程度が多少力んだところで敵う相手ではないとわかっている。
「……仮に」
再び先に動いたのは白ひげの方だった。
「仮にお前を乗せたとして、お前は何が出来るんだ小娘。そんな小さい体で本当にやっていけるのか? ここはお前の育った船じゃねェんだ。甘やかしやしねェ」
「甘やかされなくて構わない。オーロ・ジャクソンでだって、船の仕事に関しては甘やかされてなかったもの。航海術と医術は基礎しか分からないけど、厨房になら立てます」
「……おいビスタ」
フレイアの言葉を聞いた白ひげが近くにいた二刀流の男に声をかけた。
「お前の刀を一本貸してやれ。それと……エルトン! ちょっとこっちに来い!」
「え、おれ!?」
「お前以外にいねェだろい」
「ほら、さっさと行って来い」
ジョズに肩を押されたエルトンと刀を受け取ったフレイアが揃って白ひげを見上げると、ニヤリと笑顔を返される。
(もの凄く嫌な予感がするんだけど、おれ生きて帰れるよな!?)
「小娘、お前の覚悟は分かった。しかし、海賊ってのは船の仕事だけ出来ればいいってもんじゃねェだろ。そこにいる息子と戦っておれが認めたら、お前を乗せてやる」
「……分かった」
「オヤジ!? なんでおれなんだよ! ビスタでいいじゃん!」
「お前が連れてきたんだろうが、アホンダラ」