第5章 解けた先に交わるものもある
あの父親と喧嘩するなんて恐ろしいとフレイアが軽く身震いする。マルコはそんなフレイアを他所に軽く何度か頷いて立ち上がった。
「それで、これからどうする?」
「……」
(それよね……一番の問題は)
ジッと自分の包帯の巻かれた手を見ながらフレイアは手始めに現状確認を始めた。
まず、マルコの物言いからして恐らくここはエッド・ウォーからそこそこ距離がある。ビブルカードを持たない自分が運次第で合流に持っていくのはかなり難しいだろう。
次に、この船……白ひげ海賊団にはフレイアを態々送り届ける義理はない。命を助けられただけでも充分な恩をかけられている。
次に、恐らく自分は気をつければ行動できない程の怪我ではない。確かに先程は起き上がれなかったが、無茶なことをしなければ問題はないだろう。
そして最後に……ロジャーに残された時間を考えれば、自分なんか迎えに来るために時間を割いて欲しくはない。今の彼にはただ前だけを見ていてほしい。
(じゃあ、私はどうするべきなのか)
「……」
「答えは決まったかい」
「ええ」
覚悟を湛えた瞳で顔を上げたフレイアは、慎重に体を動かす。輸血パックのぶら下がったスタンドを片手で持ってしっかり立ち上がった彼女を見て、マルコは「おい」と控えめに制止を促すがフレイアはジッと彼を見上げて口を開いた。
「ここの船長と……白ひげと話がしたい」