第1章 見習いトリオ
「んー、思ったより行かなかったな」
「一位が何言ってんのよ、嫌味?」
「お前ら小さいことで争うなよ」
(最下位だったくせに変に機嫌がいいわね)
1時間もしないうちに決着した戦闘の後、最初の賭けの結果発表をした三人は、宝を回収する大人たちに交じって木箱を抱えながら雑談に花を咲かせる。僅差でシャンクスに負けたフレイアは少し不機嫌そうにしながら汗で張り付いた髪を束ねる。
「おい」
「え?」
突然手を伸ばしてきたシャンクスに動きを止めると、軽く髪の毛を服の裾で撫でられた。
「血ついてたぞ」
「ありがとう」
「せっかく綺麗な藍なんだから変な色混ぜるな、勿体ない」
「変な色ってシャンクスの髪は赤でしょ」
「おれは別に血で赤いわけじゃねェよ……」
母親譲りの深海のような深い青色を褒められたのは嬉しいものの、どこか釈然としない。自分とは真逆なシャンクスの赤を気に入っているフレイアはむっとした顔で麦わら帽子を取り上げ、シャンクスの頭を乱暴に撫でた。
「あ、返せこら」
「ばーか」
「……おれも居るってこと忘れんなよ?」
じゃれあうシャンクスとフレイアを見かねたバギーが舌打ち交じりに存在を主張するも、麦わら帽子を巡って激しい争奪戦を始めた二人の耳には届いていなかった。
「テメェらなあ!!!」
「何よバギー、大きな声出して」
「何か面白いものでもあったか?」
「レイリーさーーん!!! シャンクスとフレイアが仕事サボってまーーす!!」
「あ、お前」
「てめェらは荷物も大人しく運べねェのか!!!」
その夜、勝利を祝って船の中では恒例の宴が開かれていた。
「フレイアもの」
「あ?」
「まないな!」
酒瓶を渡そうとしたシャンクスは、フレイアの隣にいたファイの殺気のこもった瞳をうけて瞬時に手を引っ込めた。
「一口くらいなら……」
「ダメだ」
「ケチ」
「そんなもん、大人になったら嫌でも飲める」
そう言ってジュースの入った瓶を渡そうとしたファイに、フレイアは舌を出してシャンクスの手を取った。
「バギー探しに行こう」
「え、ああ……」
飲めや食えやの騒ぎの食堂の中を器用に進んでいく二つの背中を見て、ファイは軽く溜息を吐きながら酒瓶を口につけた。