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鏡面【ONE PIECE】

第5章 解けた先に交わるものもある


(やっぱりキリがないわね)
 向こうの本船でロジャーとシキが刃を交えているのが見える。ロジャー海賊団の主力達はうまくバラけて戦力を削っていっているのを見聞色で感じ取り、フレイアは軽く力を抜いた。
(私程度が心配するなんて烏滸がましいか)
 考え事をしながらも、背後から振り下ろされたカトラスを軽く体を捻って避けて、その勢いのままに刃を突き立てる。一息つく間もないと嘆息しつつ刀を構え直す少女を、男達が1、2歩下がって取り囲んだ。
「子供相手に情けないわねェ」
 挑発するように薄く笑ってそう言うと、周りにいた男はピクリと反応する。自分の人生の半分も生きていない子供にそんなことを言われて、大人しくできるタイプではないらしい。それを見てフレイアは笑みを深める。
「あら、来ないの?」
「このクソガキ!!」
 耐えきれなくなった一人が飛び出すと、後はなし崩しのように飛びかかってきた。中心にいるフレイアは小さく唇を舐めて刀を両手で握る。
(この人数なら8割はいける)
 グッと足に力をいれ、甲板を蹴るとフレイアの影がその場で揺れる。数秒の静かな間をおいてフレイアが先程と同じ場所に立った時には周りには飛びかかってきた殆どが伏せっていた。
「おーすげェ! お前【明鏡止水】使えるようになったんだな」
 明るい声にフレイアが目を向けると、彼女の背後に迫っていた敵を斬り捨ててシャンクスがニコリと笑った。
「……まだ溜めが必要だから実戦向きじゃないわ」
「ハハ、ファイさんが言いそう」
「バギーは?」
「あっちの船でミランダさんと一緒にいたぞ」
「生きてるなら何でもいい」
 お互い返り血や自らの血で酷い状態ながら、まるで普段通りだとばかりに雑談と刃を交わす。手の内を知り尽くしているからこそ、互いの剣筋の邪魔にならないよう自然に体が動いていた。
「ここは大丈夫そうだな」
「うん」
「じゃあおれは他の所行く! 後で会おう!」
「全部終わった後にね!」
 シャンクスが隣の船に移っていくのを見送りながら刀を構え直すと、ポツポツと手の上に雨粒が落ちてきた。
 空を見上げて目を細めていると、船のすぐそばに砲弾が飛んできた。遠くからでもわかる海軍の軍艦に、フレイアの背中を冷や汗が伝う。
「こんなときに……まさかお祖父ちゃんは来てないでしょうね?」
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