第5章 解けた先に交わるものもある
「そういえば覇気はどうだ?」
「うーん、見聞色は結構上達したと思う。武装色はまだまだかな……お父さんと竹刀で打ち合ったら5分と経たずに折れる」
「ファイ相手じゃね……アイツ相変わらず手加減が下手なんだから」
溜息を吐くミランダの隣でロジャーは声を押し殺して笑う。
「そりゃあ、剣一本と身一つで世界に喧嘩売ってた男だからな」
「ああ、その過程で出会ったんだよね二人って」
「おう。まだおれとレイリーしか居なかった頃から何回か会ってて、その度に喧嘩売られてたな」
「何やってるの」
呆れた表情をするフレイアにレイリーが肩をすくめる。
「なんだ、詳しく聞いてないのか。アイツは昔辻斬りのようなことをしてて、殺せなかった俺たちに興味をもって付きまとってくるようになったんだ」
「……」
昔の父親に姿に驚くより納得がしている自分がいて、フレイアは曖昧に笑う。
「お互いお尋ね者だ。海軍相手に共闘して、また戦ってってしてる間にコイツが執拗に勧誘してな。最後はファイが折れた」
「お父さんを折れさせるって相当ね」
頑固な父親の顔を思い出しながら、フレイアがロジャーを見上げるといい笑顔を返される。
「フレイアも直ぐに強くなるよ。純粋な剣術ならファイだってそこそこ認めてるでしょ?」
「まだまだって感想しかもらってませーん」
ミランダの言葉に返事をしたフレイアの声に不満が滲んでいるのを感じて、三人は小さく笑った。
(まァあの男は一生認めないだろうな)
いつまでもフレイアがロジャー達にとって子供であるように、ファイにとってはいつまでも彼女は庇護するべき娘なのだから。
「あの男が父親やってんのも面白いねェ」
「若い頃のアイツに言ったら絶対に睨まれるぞ。剣と心中するって言ってた男だからな」
「そんなお父さんを骨抜きにしたお母さんって一体……」
温くなったココアに口をつけながら、見たことない母親を想像して冷や汗をかいた。優しい人だの脆い人だの、様々な話を聞きすぎてイメージが迷走しつつあった。
「マイアは……猛獣使い?」
「言い得て妙だな」
「ハハハ。さて、そろそろ朝の支度始めようかね、フレイア」
「はーい」
ココアの残りを流してこんで席を立ち上がると、慌てた足音が近づいてくるのが聴こえて全員扉の方へ視線を向ける。
「せ、船長!!」