第4章 新しい朝、そして懐古の夜更け
「過保護が多いと育つはずの器も育たねェな」
「……なァロジャー船長」
「どうした?」
「フレイアを守れるくらい強くなれるかな?」
「……」
珍しく弱気なことをいう目の前の少年に、ロジャーは目を僅かに見開く。子供らしく無邪気で、それ故に危なっかしい所もあるが、一本ぶれない芯の通った強さがある。そんな彼が妙に臆病になっているのは珍しいことだった。
(まったく、フレイアも罪な女だなァ……)
こんなに想われているとは知らないであろう少女の顔を浮かべて、やれやれとロジャーは笑った。突然笑い出した船長にシャンクスがキョトンとした顔をすると、当の船長は笑ったままシャンクスの頭を麦わら帽子越しに叩いた。
「お前は強くなるさ。安心しろ」
「いって……本当に?」
「おう、おれがこれを託したんだからな!!」
軽く二回ほど頭を叩くと、ロジャーは背を向けて船内の方に歩いていく。
「あ、そうだ」
扉に手をかけたところで振り返ると、シャンクスに向かって酒瓶を投げる。慌てて彼がキャッチすると、悪戯っ子のようにロジャーは笑った。
「それ食堂からくすねてきたんだ。ミランダに見つかるなよ!」
「はァ!? ちょ、ちょっと船長!??」
「はっは、陰気なこと考えてねェで、フレイアが離れていかないようにちゃんと繋いでおけ! ファイみたいに毎日シケた面を曝すことになるぞ!」
言いたいことだけを言って去っていたロジャーに、シャンクスは頭を掻きながらやれやれと息を吐く。
「ちゃんと繋いでおく……か。あれを?」
上方の見張り台を見上げながら、フレイアの顔を思い浮かべる。
(いや、難易度高すぎだろ)