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鏡面【ONE PIECE】

第4章 新しい朝、そして懐古の夜更け


「海の民の力と悪魔の実の能力、二つは決して相反するものではないと、おれは思うぞ」
「……」
「ファイはマイアのことがあったから、妙に悪魔の実の能力を反対側に置きがちだがな……おれは経験上、完璧に反対側のことなんかそうそうないと思う。敵同士の海軍とだって、極々たまにお互いの正義が交錯することがある。世の中のものは、どんなことでも常にどこか交わってるもんだ」
「……私は……何も諦めなくていいって言いたいの?」
 泣きそうな顔で笑うフレイアにロジャーは真剣な顔で首を縦に振った。
「お前はまだ若い。そうそう早くに自分の可能性を限定するな。お前の人生これからだろうが!」
「……船長が言うと洒落になんないよ……」
 涙声のフレイアに対し、ロジャーは満面の笑みでフレイアの頭を撫でまわす。
「そうやって自罰的な所はファイ譲りだな」
「お父さんとお母さんの娘だもん」
「可愛げがねェのも父親譲りだ」
「ふふ、可愛いお父さんなんて想像もできない」
「したくもねェな」
 声を揃えてひとしきり笑うと、ロジャーはシュラウドを器用に下っていく。甲板に辿りつくと、根本でマストにもたれかかっている小さな影を見つけて唇の端をあげる。
「盗み聞きか? シャンクス」
「メインマストの見張り台の声が聞こえるわけないよ」
「見聞色を使えば、雰囲気はお前でも掴めるだろ」
「……おれ、まだ見聞色は教わってない」
「一を教わって一しか吸収できないタマじゃねェだろうが」
 なにより不機嫌そうな顔がすべてを物語っていると言いたかったが、更に眉間の皺が深くなりそうなのでロジャーは言葉を飲み込んだ。シャンクスはロジャーの言葉に「ワッチの交代が近かったからいただけだ」と的外れな返答をして誤魔化す。
「フレイアもお前も、いつかこの海で対峙するんだろうな」
「そうなりたいなァ……」
「なるさ。覇王色持ちがそこら辺の海で満足するわけねェ」
「え、フレイアも?」
「多分な……ま、アイツが発現するにはちょっと時間を食うかもしれねェが」
 遥か上の見張り台を見上げながら言うロジャーにつられてシャンクスも顔をあげる。天気が良ければ、彼女の髪が靡いている様子が見えるのだが、今日はただ黒い雲だけが空を覆っている。
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