第4章 新しい朝、そして懐古の夜更け
「なァフレイア」
「何?」
「いつまでトランプ量産するんだよ」
レイリーが去って行ってから十数分。黙々とトランプを一枚ずつ作るフレイアの邪魔をするのは悪いと眺めていたバギーだったが、流石に限界が来て口を開いた。それに対し、フレイアは精製を止めないまま返事を返す。
「あとスペード四枚とジョーカー」
「一式作るのかよ」
呆れた顔をするバギーの隣で、シャンクスはトランプを一枚ずつ眺めてはマークごとに並べる。
(背面のデザインも市販のものと全然遜色ねェし、バギーと会話してても速度はそのまま……案外フレイアに向いている能力だったのかもな)
微笑みながら出来上がったトランプを手遊みにシャッフルし始めると、食堂の扉が開く。
「あれ、お前らこんなところで何やってんだ?」
「ギャバンさん、今フレイアがトランプ量産中」
ひらひらと一枚振って見せると、ギャバンが首をかしげる。
「トランプなら談話室や遊戯室にあるだろ。なんで作ってんだ?」
「能力を使う練習で」
「へェ……フレイアの能力はトランプを作れるのか?」
「トランプに限らずレイリーさん曰く色々作れるって」
「便利じゃねェか」
「出来た!」
最後のジョーカーを手に握ってフレイアが深く息を吐く。それを受け取って一つの山にすると、新品のトランプが一式完成した。
「お疲れ」
「うーん、集中するとやっぱり体力使うわね」
「丁度いいからそれでカードでもするか? 今当番のない奴等でそういう話になっててな、人を探しに来たんだ」
ギャバンの提案に退屈そうだったバギーが一気に元気になる。
「やる!」
「おれもやろうかな」
「バギーとシャンクス、賭けられるほど今お金あった?」
「増やすんだよ!」
「勝てば問題ねェな」
「じゃあ決まりだな。フレイアはどうする? ファイもいるぞ」
「うーん、次の島で欲しい本ができたから行こうかな」
「お前、次の島で降ろさせてもらえんのか?」
「だ、大丈夫よ多分……」
父親の顔を思い浮かべてだんだん小さくなるフレイアの声。前の島で散々迷惑をかけた以上、今までより厳しくされる可能性はある。それを過保護だと跳ね除けることも難しい。