第4章 新しい朝、そして懐古の夜更け
「……お前達、頼んでおいた仕事は?」
「終わりました!」
「珍しい」
「んだと!?」
会って1分もしない内にじゃれあいだした三人にレイリーは溜息をつく。
(どうして揃うとここまで落ち着きがなくなるんだ、この三人は……)
「ところで、フレイアの能力って何でも作れるのか?」
「え? さ、さァ……まだ意識して使ったのは初めてだし……」
「お前おれの能力とトレードしろよ。明らかにそっちの方がアタリじゃねェか」
「嫌よ」
「そんなに簡単な能力じゃないぞ」
盛り上がる三人に割って入ったレイリーが苦笑しながら全員に着席を促す。
「例えばこのペン……」
おもむろに取り出された紙にレイリーが先程作ったペンを走らせる。しかし、紙の上にインクが乗ることはなく、ただ引掻いた跡だけが刻まれた。
「なんだ、壊れてるじゃねェか」
「あれ……?」
「インクが入ってないんだ。フレイア、思い浮かべたのはペンの外見だけだっただろう」
「う、うん」
「この実の厄介な所でな、使っている様子を想像出来なければこうしてガワだけが作られてしまうんだ」
「へェ……」
「あと、飲食物を作り出すことは出来ないから、基本的にもの作りの能力だと思いなさい」
「え、じゃあ腹減った時とか役に立たないんじゃん」
「五月蠅いわね。細切れにするわよ」
少し落胆した様子のバギーにムッとした様子でフレイアが低い声を出す。
「そう言うな。この能力はどこまでも当人の想像力と知識次第だ。一瞬で望むものを創れるようになるには、かなり練習を要するだろうが……逆に言えば、思うままに扱えるようになれば汎用性の非常に高い能力だ。戦略の幅も大幅に広がるぞ」
「自分次第か……」
「まずは身近で小さなものを正確に素早く創れるように練習してみるといい」
「はい」
フレイアが自らの手をじっと見つめて軽く握る。
(自分次第なら、いい感じにセーブすることも出来るってことよね……)
「ああ、一つ忠告をしておこう」
講義は終わりだと言って出て行こうとしたレイリーが、出口で三人の方を振り返った。
「今はまだ出来んだろうが……もし出来るようになっても、動植物といった命を作ることは絶対にするなよ。お前の寿命を縮めることになる」
「はい」
フレイアが神妙な顔で頷いたのを確認して、レイリーは食堂を出て行った。