第4章 新しい朝、そして懐古の夜更け
「よし、じゃあ始めるか」
「よろしくお願いします」
いつもとは違い、食堂に呼び出されたフレイアは神妙な顔でレイリーと向き合う。
「そう固くなるな。ところで最初の時以外、能力を使ったことは?」
「いえ、全然……何が変わったのか自分でもさっぱり」
日常生活を送っていても、ファイとの修行をしていても、一向に自分の能力が発動した様子はない。バギーの時もそうだったが、本当に自分は悪魔の実を食べたのかと疑ってしまう。
「そうだろうな。まァ口で説明するより試した方が早い。手をテーブルの上に出せ」
「はい……?」
言われた通り手のひらを下にしてテーブルに置くと、次は目を瞑るよう促される。
「今から……そうだな、ペンを想像しろ」
「ペン?」
「そうだ。いつもお前が愛用しているものでもいいし、欲しいものでも何でもいい。色や形、大きさ等々、細部までしっかりな」
「……」
戸惑いながらもレイリーの言う通り、フレイアは脳裏にペンを思い浮かべる。
(何がいいかな……いつも使ってたやつ、バギーに貸したら失くされのよね。バギーはシャンが失くしたって言ってたけど)
桜色の光沢の上に細かい金細工が施されたペンは、ファイが誕生日に数年前買ってくれたものだった。お気に入りだったのにと怒りを感じていると、レイリーから集中しろとお叱りが飛んできた。改めて気持ちを落ち着けて、見た目や触っている時の質感までしっかりと思い出していると、手元でカタンと乾いた音がした。
「……え?」
「どうだ、驚いたか?」
「え、なんで?」
「これがお前の食べた悪魔の実……『ソウソウの実』の能力だ」
音に驚いて目を開けてみると、手の下に思い描いていたペンがそのままの姿で置かれていた。目を丸くして、ペンを様々な角度から眺めてみると傷の位置まで自分の記憶のままだ。
そんなフレイアを見てレイリーは「お前がやったんだぞ?」と笑った。
「失せ物探しの能力なの?」
「いいや。お前の能力は『創造』だ。簡単に言えば、フレイアの思い描いたものを何でも具現化できる」
「なにそれめっちゃ便利じゃねェか!!」
「おいバギー!」
「……」
「……」
食堂の扉から雪崩れ込んできたシャンクスとバギーに、二人分の視線が刺さる。途中から気配を感じていたため、存在に驚きはしない。ただ隠れる気がないことに呆れていた。