第4章 新しい朝、そして懐古の夜更け
フレイアの調子が元に戻るまで、まだ数日滞在することとなったロジャー海賊団はすっかり日常を取り戻していた。最初は瞳の色が変わったことに驚き、気を遣いながら接していた様子のクルー達も、前と変わらない彼女と彼女を取り巻く者達を見て普段の調子になっていった。
「おいフレイア!」
「え?」
「ファイが探してたぞ。あとシャンクスはレイリーが。二人とも甲板にいる」
「おれも?」
顔を付き合わせて航海術の本を読み解いていた3人の元に、工具を持ったクロッカスが話しかけてきた。突然の呼び出しに心当たりがない2人は、顔を見合わせて首をひねる。
「クロッカスさん、おれはー?」
「医務室の修理手伝え」
「ええ……」
「頑張れよバギー」
「いってらっしゃい」
「テメェら覚えとけよ」
クロッカスに引き摺られていくバギーを、手を振りながら見送ると、二人は待ち人のいる甲板にむけて足を向けた。
「ねェ」
「なんだよ」
「回れ右して逃げられるかな」
「無理だろ」
人払いがされている甲板でなにやら楽しそうな顔をしているレイリーと、いつも通りの仏頂面でその隣に立つファイに、思わず二人の足が離れたところで止まる。逃げられるわけがない。それは分かっているのだが、嫌な予感しかしない。
「なにをしている、早く来い」
「はーい……」
全力で行きたくない雰囲気を出してみたものの、声をかけられては逆らえない。
「何かご用でしょうか……」
「そう構えるな。お前達が最近夕方にこっそり出掛けている件は黙認することになってるからな。それに、その件を叱るならバギーも呼んでる」
(バレてるよ……)
一番懸念していた案件をあっさり言われて、シャンクスとフレイアは揃って乾いた笑みを浮かべる。
「フレイアの容体も大分落ち着いてきたからな、そろそろお前たちに覇気の使い方を教えておくべきかと思って呼んだんだ」
「覇気ってお父さんが私を探すときに使ってるアレ?」
「そうだな。それも含めて三種類の覇気が存在する。本当はフレイアには剣術の傍らゆっくり仕込んでいくつもりだったんだが、お前は無茶ばかりするから予定を早める」
「反論は何もないです……」
項垂れるフレイアの隣で、シャンクスが「おれは?」という顔でレイリーを見上げる。