第4章 新しい朝、そして懐古の夜更け
「視力が落ちるとかそういうことは無いから安心しろ」
「うん」
見慣れない姿ではあるものの、確かにそこにいるのはフレイアなのだと実感してシャンクスとバギーは揃って胸を撫で下ろす。しかし、最大の問題が残っていることは二人共頭の片隅で感じていた。
「あのさ」
「お姉ちゃん!!」
「あ、あの時の」
シャンクスが話かけようとした瞬間、小さな影が二つ飛び込んできた。
「あ、あの」
「無事で良かった。これで何かあったら命の張り損だったよ」
そう言って何もなかったように笑うフレイアをみて、姉妹がポロポロと涙を零して謝る。
「え、ちょっと」
「ごめんなさい……ありがとうございます」
「あ、いや最終的に助けてくれたのはお父さんとシャンだし」
泣く二人に焦った様子を見せるフレイアに大人達が小さく笑う。自分がしたことの大きさを上手く理解出来ない純粋さか、感謝され慣れていなくて照れているのか、はたまた両方か。
「と、というかなんでこの子達が船に!?」
「あ、逃げた」
「バギーうるさい!!」
「お前に礼が言いたいときかなくてな」
「じゃあまだ出航してないんだ……」
「ん? 何かあったか?」
「い、いや別に」
ははは、と適当に笑うフレイアにファイが眉をひそめるが、何も言わずに姉妹の方に向き直る。
「ほら、そろそろ良いだろう。お前らの両親も海賊船に入り浸りじゃ心配するだろ」
「う、はい……」
「お姉ちゃん、あの、本当にありがとう!!」
「うん、元気でね」
医務室を出て行く小さな背中を安心したような顔で見送るフレイアに、全員がやれやれと溜息をつく。
「お前、体は本当に大丈夫なのか?」
「え? うん、特に何も」
「本当か?」
「え、なに怖い」
見習い2人に加えて父親も副船長も揃って迫ってくる様子に、思わず狭いベッドの中を後ずさる。その心当たりが全くなさそうな顔に一同が顔を見合わせる。
「どうなってんだ?」
「分からん」
「やっぱりフレイアの母親がおかしかっただけじゃねェの?」
「まぁ何もないに越したことはないが……」
「何コソコソしてるのよ4人で」
顔を付き合わせて話し合う4人に呆れた顔をしたフレイアがベッドから降りようとした瞬間、大きな足音が近づいてくる音が聞こえて視線を入り口に向ける。