第4章 新しい朝、そして懐古の夜更け
「おい」
「うわあああ」
「……仕事サボってたのか?」
突然うしろからファイの声がして、思わず飛び上がる二人。その様子に眉を顰めたファイに全力で首を横に振ると、疑うような視線をむけながらも追及はなかった。
「な、何か?」
「……フレイアが目を覚ました」
「な」
「ホント!?」
「ああ、とりあえず……お、おい話はまだ……あのクソガキ共が!」
話を一切聞いていない様子でモップを捨てて走っていく二人を止めることも出来ず、放置されたファイが溜息を吐く。
「まァいいか……会ってからのサプライズで」
三人が会った時のことを想像して唇を歪めると、ファイも医務室の方へ足を向けた。
「フレイア!!」
「大丈夫か!?」
「てめェら船を壊すな!!」
扉を蹴破って入ってきたシャンクスとバギーにレイリーの鉄拳が落とされる。しかし衝撃で尻餅をついて頭を押さえたのも束の間、直ぐにベッドに駆け寄っていく。
「元気そうね、二人は」
「な」
「お、おま」
ベッドの上で上半身だけ起こした状態で座っていたフレイアを目の前にして、二人が零れ落ちそうなほど目を見開く。その様子が面白かったのか、声を上げて笑うフレイア。
「その目どうしたんだよ!?」
「か、鏡! 鏡持ってきてレイリーさん!」
「バカヤロウ、枕元にあるだろうが」
焦って飛びついてきたバギーを軽く避けながら、枕の横に置かれた鏡を顎で指す。お腹を抱えて笑っている本人の様子から、既に目の前の状態を分かっているのだと察してシャンクスとバギーは顔を見合わせた。
「なんか拍子抜けだな」
「な、おれ達はあんなに脅されて塞ぎ込んでたのによ」
「なによ、落ち込んで泣いてた方がよかった?」
笑い過ぎて涙の滲んだ目元を拭いながら微笑むフレイアを見て、二人も表情を緩めた。
「しかし、どうしたんだそれ」
「知らない。起きたらこうなってたのよ」
澄んだ海の色をしていた瞳は、魔法でも使ったかのように透明感のある紫色に染まっていた。見慣れないその様子に腕を組んでじっと目を見る2人に、フレイアは思わず視線を逸らす。
「マイアも目の色が変わったんだ。あいつは黒だったが」
「へェ……」
「悪魔の力を入れた代償ってことだ」
突然会話に入ってきた声に皆が扉の方を見ると、二人に遅れる形でファイが医務室に入ってきた。