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鏡面【ONE PIECE】

第3章 それぞれの夜


「そこら辺の話をしてやるって言ってんだ。黙ってついて来い」
 頭をガシガシかきながら背を向けて歩き出すファイに、シャンクスとバギーが顔を見合わせる。
「あ、あの」
「なんだ?」
「……なんでおれ達に」
「おれがいなくなっても、あいつを理解してくれる人間が必要だからだよ」
 最後まで言い終わらない内に出された回答にバギーが目を見開く。
(そんなまるで、自分がもうすぐ消えちまうみたいな……)
「行くぞバギー」
「えー!?」
 先程とは打って変わってあっさり立ち上がったシャンクスに叫ぶ。そのまま医務室を出ていく二人の後ろで、扉とフレイアを交互に見ていたバギーだったが、入り口からじっと見つめるクルー達の視線に耐えきれず医務室を飛び出した。



 食堂にたどり着くと、ファイが適当な席について向かいに座るよう二人に促す。
「さて……何から話したものか」
 喋るの得意じゃねェんだよな、と眉を顰めるファイに思わずがくりと二人の緊張していた肩が落ちる。
(時々この人は本当に馬鹿なんじゃねェかと思うな)
(剣を振るうしかしてこなかったって豪語するだけあるよな、ファイさん)
 口が裂けても言えないことを考えながら、大人しくファイが口を開くのを待っていると、頭の中でまとまったらしい彼が軽く息を吐いた。
「まあ、まずは母親のことか」
「フレイアの……?」
「ああ、名前はクラウド・マーレ・マイア。元々、父親と同じ海軍本部で看護師をしてた。たまたま会ったおれと一緒になると同時にこの船に来たんだ」
「ああ、攫ったと噂の」
「言っとくが合意だぞ?」
 あの父親が誘拐だの言うから広まってるだけだ、としかめっ面をするファイに、二人が愛想笑いの棒読みで返事をする。以前レイリーから、悩んでいた彼女を本部に乗り込んで連れてきたという話を聞いていたので信用は全くない。
「あの荒っぽい父親とは正反対で、穏やかな……凪いだ海みたいな女だった」
 ふっと力が抜けて、懐かしそうに笑うファイ。彼の珍しい表情に、マイアのことを心の底から愛していたであろうことを察した二人は笑いを引っ込めて真剣な顔になる。

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