第15章 背中を追うこと、隣に立つこと
泣いて縋ろうとする者達に「船長命令が聞けねェのか!」と一喝しながらも、海軍を足止めすべく、白ひげは攻撃の手を休めなかった。その容赦のない様子にセンゴクは白ひげの本気を感じ、冷や汗を流す。
「奴は本気でこのマリンフォードを海に沈めるつもりだ!! 己の命と一緒にな……!」
手負いの白ひげひとりだと攻撃する海軍を一笑に伏すかのように蹴散らす白ひげと、逃げる用意を始める海賊を交互に見て、フレイアは自らの船のクルー達に撤退命令を出す。そして……自らは白ひげの元に飛び出していった。
「おい、何のつもりだアホンダラ」
「ちゃんと逃げるわよ。私ならいざとなったら飛べる……ただ、自分の船が逃げる時間を稼ぐだけ」
(ただ……最後くらい少しでも一緒にいたいだけ……)
父親と呼べる者達と最後の語らいすら許されなかったフレイアの本音はそんなものだった。フレイアが退かないと悟った白ひげは、小さく溜息を吐きながら「足手纏いになんなよ」と呟いた。そんな二人の近くに火柱が大きく立つ。火の中から現れたのは……土下座しているエースだった。
「……言葉はいらねェぞ……ひとつ聞かせろ、エース。おれが……オヤジで良かったか?」
その質問にエースは間髪入れずに答えた。
「勿論だ!!」
「グラララ」
笑いながらエースを送り出す白ひげを見上げてフレイアは笑うと、目の前に迫っていた海軍を湖月で蹴散らした。広範囲攻撃を得意とする二人になす術もなく蹴散らされる海軍の中で、赤犬が前に出た。
大きな燃える拳を突き出した赤犬は、逃げ惑う白ひげ海賊団を嘲笑うように口を開く。
「エースを解放して即退散とは、とんだ腰抜けの集まりじゃのう白ひげ海賊団。船長が船長……それも仕方ねェか……! 【白ひげ】は所詮……先の時代の敗北者じゃけェ……」
その言葉に前を走っていたエースはピタリと足を止めた。
「敗北者……? 取り消せよ……! 今の言葉!!」
怒りを露わにするエースと対峙しながらも、赤犬は冷静に彼の本当の父親であるロジャーを引き合いに出しながら白ひげを貶める。それを見た白ひげ海賊団は皆一様にエースに戻るように叫ぶが、頭に血が昇っているエースはその身から炎を吹き出し始めた。