第15章 背中を追うこと、隣に立つこと

　その次の瞬間、フレイアは強く空を蹴って壁の向こう側に飛び出した。
　ルフィの必死の攻撃を前にしても一切動じることのない三大将を前に、戦闘では不利と悟ったのか、ルフィはギア2でその間を猛スピードで走り抜けようとする。しかし、スピードで光には敵わない。黄猿の蹴りを受けて吹っ飛ぶだろうと思われたルフィは、しかしガードのために前に出した手をそのままにその場に立ち続けた。
「？」
　恐る恐る顔を上げた先には、覇気を纏った刀で黄猿の攻撃を受け止めるフレイアがいた。
「ひとりで突っ走らないの。団体戦よ？　これ」
「鏡面……」
　黄猿の脚を払ったフレイアは返す刃で周囲に斬撃を飛ばす。そして、周囲を取り囲む海軍に向かって覇王色の覇気を放った。
「っ！！」
「【剣聖】のひとり娘は伊達じゃないねぇ〜」
「……」
　バタバタと倒れていく海軍の兵士たちと膝をつく少将以下の将校達に青雉は周囲を見て冷や汗をかく。戦力差を前にしても不敵に笑い、特徴的な刀を構える姿はかつての彼女の父親を彷彿とさせる。過去を知る者達は無意識に息を呑んだ。
　真っ先に動いたのは赤犬だった。
「いくらお前でもこの差は埋められん」
「……倒す必要ないもの」
　飛んできたマグマの塊を一刀両断したフレイアは覇王色と武装色を纏った刀を両手で持ち、霞の構えをとると、細かく刀を突き出した。
「【鏡葉】」
　目に見えぬ斬撃の雨となった攻撃を避けきれず、赤犬の腕や頬から血が流れる。
　それを見た黄猿はフォローするように飛び上がった。光の球が無数に降り注ぐのを見たフレイアは、近くにいたルフィを守るように頭上に大きな板を創造してそこに覇気を纏わせる。
　その隙を突くように横から氷の刃を向ける青雉を横目に確認したフレイアは、片手で持った刀でそれを受け止めた。キンッと澄んだ音をたてて交わる二人の刀と視線にルフィはぞくりと身震いする。
「すげぇな、お前」
「何ぼーっとしてるのよ。早く行きなさい。エースを助けるんでしょ」
「おう！！！　ありがとうな！！」
　三大将がルフィの方に行かないよう常に位置を変えて攻撃を捌くフレイアに、センゴクは処刑台の上で歯軋りをする。更にクロコダイルが処刑を担当する兵士を斬り捨て、マルコがフレイアのカバーに入った。