第15章 背中を追うこと、隣に立つこと
白ひげに続いて前に前にと進む海賊達の中で、フレイアはひとり厳しい顔つきで足元を見続けていた。妙な胸騒ぎがザワザワと胸を刺す。そんな彼女に隙ありとばかりに向かっていく海軍は一閃で切り伏せられた。
「……! オヤジさん!!」
氷の下に見えた何かに気付いたフレイアが叫んだ瞬間、白ひげの能力によって島が大きく傾く。踏ん張ることを諦めたフレイアは空に飛び上がり、高台に逃げる海軍を追うように足を踏み出した。しかし、そんな彼女を遮るようにして大きな壁が姿を現す。
舌打ちしながら下がったフレイアは、白ひげの隣に降り立った。鋼鉄の障壁に囲まれた海賊達に向けて、赤犬の攻撃が降り注ぐ。フレイアが湖月を空に向けて放つも、全ての攻撃が相殺されるわけではない。徐々に溶けていく氷を見て、フレイアは目を細めた。
(このままじゃジリ貧ね……)
「フレイア」
「なに?」
白ひげに呼ばれてフレイアが顔を上げると、白ひげはじっと前を見据えながら口を開いた。
「あの大砲の口、塞げるか?」
「……出来る!」
「頼む。時間を稼ぐ」
「了解」
その場を白ひげ海賊団の幹部達に任せると、フレイアは再び空を駆けた。足場を失い右往左往している海賊達に向けて降り注ぐ砲弾の出口……壁に開いたいくつもの穴の付近に手を触れ、自らの悪魔の実の能力を行使する。
穴を塞ぐように飛び出した壁に海軍達は驚き目を見開いた。
「クッ鏡面め……まぁいい。これより速やかにポートガス・D・エースの――処刑を執行する!」
マイクに向かってそう宣言したセンゴク。その声を聞いて海賊達は一様に早く早くと壁に向かって攻撃をするも、白ひげの攻撃ですら崩れぬその守りに傷をつけられる者はいなかった。
そんな中、一本の水柱が大きく弧を描いて壁の内側から海軍の中央へと着地する。その中から現れた少年は折れたマストを抱えながら、ひたすら前を見据えていた。
「あらら、とうとうここまで……お前にゃまだこのステージは早すぎるよ」
「堂々としちょるのう……ドラゴンの息子……」
「怖いね〜この若さ……」
大将三人を前にしても臆することないルフィの様子を感じ取ったフレイアは、眉間に皺を寄せながらも白ひげを振り返った。そっと目を合わせた二人はお互いの考えを理解し、同時に頷く。