第15章 背中を追うこと、隣に立つこと
モビー・ディック号の上では、白ひげとスクアード、そしてマルコが船首の上で向かい合っていた。この戦争は仕組まれたものだと主張するスクアードに対し、怒鳴り声を上げるマルコと苦々しい顔を浮かべる白ひげ。そんな三人に声を上げたのは……クロコダイルだった。
「みっともねェじゃねェか、白ひげ!! おれはそんな弱ェ男に敗けたつもりはねェぞ!!!」
クロコダイルの言葉に、白ひげ海賊団の者達の頭に浮かんだのは戦争前に医療器具を全て外していた白ひげの姿だった。誰にも止められなかった。しかし止めるべきだったのかと、一抹の後悔が脳裏を掠める。
そんな息子達の憂いを断ち切るように白ひげはスクアードに向かって一歩踏み出した。
「スクアード……おめェ仮にも親に刃物突き立てるとは……とんでもねェバカ息子だ」
厳しい言葉を吐きながらも、白ひげはその大きな体を畳みスクアードをその胸に抱きしめる。
「バカな息子を――それでも愛そう」
「ふざけんな!! お前はおれ達の命を……!!」
「忠義心の強ェお前の真っ直ぐな心さえ……闇に引きずり落としたのは、一体誰だ」
「……海軍の反乱因子だ!! お前を刺せば部下は助かると!!」
海軍と白ひげがグルだという話をスクアードに聞かせた赤犬の話をすると、白ひげは目を細めて遠くを見る。
「お前がロジャーをどれ程恨んでいるか……それは痛い程知ってらァ……だがスクアード、親の罪を子に晴らすなんて滑稽だ。エースがおめェに何をした? 仲良くやんな……エースだけが特別じゃねェ……みんなおれの家族だぜ」
伝えたいことを伝え終えた白ひげは、ひとり立ち上がり能力を使う。グラグラの実の力で背後の氷山が破壊された。
「海賊なら!! 信じるものはてめェで決めろォ!!!」