第15章 背中を追うこと、隣に立つこと
戦いが激化する中、大声を上げながら一艘の軍艦が宙を舞っていた。湾内に落ちてきたそれに海軍と白ひげ海賊団、双方が首を傾げる。
「う、海だ! 助かった。海に落ちたぞ」
「助かった!」
大勢の声が聞こえる軍艦。その中から1人の少年が顔を覗かせた。
「ルフィ!!!」
「エーースーー!! やっと会えたァ!!!」
「え、ルフィ!?」
先頭を走っていたフレイアのところまで聞こえた叫び声に、思わず足が止まる。クロコダイルにジンベエ、ルフィが一緒にいるだけでも十分な衝撃だが、そこに幼馴染のバギーを見つけてフレイアが「は!?」と目を見開いた。
「アイツ……何やってんの?」
「こら余所見するな、フレイア」
「いや、するわよこれは」
背後に気をやりながらも目の前の敵を切り捨てると、フレイアは未だ遠い処刑台を見上げる。マリンフォードの処刑台……それは、彼女にとって父が最期を迎えた場所でもある。無論、旅を始めたばかりの頃足を運んだこともあった。
「……」
フレイアが思考の片隅で感傷に浸っている間も、背後からの喧騒はだんだん近づいてくる。ルフィという新しい時代の率いる風にフレイアは唇を歪めながら、先頭部隊から離脱した。
「おいフレイア!?」
「先に行って! 私は背後の一団を合流させる!」
「しかしお前がいないと突破口が」
「私1人で開いた突破口なんてたかが知れてるわよ。人数が足りない! 貴方達は前線を維持して!」
大きく背後に飛んだフレイアはそのままルフィを狙っていた黄猿の元に飛んで刀を振るう。
「おおっと、危ない危ない」
「若者相手に本気になるのは野暮なんじゃない?」
「天竜人に手を出した以上は仕方ないでしょう」
黄猿の言葉にフレイアの心の中でルフィに対する好感度が上がる。そしてそのまま空中で切り結び始めるフレイアと黄猿。その背後では、ルフィを加えた先頭集団が真っ直ぐに処刑台を目指し、また白ひげ海賊団は左右に大きく分かれて進行を続けていた。