第15章 背中を追うこと、隣に立つこと
「……?」
「ビスタ、チェンジ!」
「任せろ!」
フレイアが身を翻した先で、ミホークの刀をビスタが受ける。彼なら任せられるという信頼をもってフレイアが足を進めようとした瞬間、ゾワリと背筋に嫌な汗が流れた。それに任せて大きく飛ぶと「流石、勘がいいなァ」と言いながらドフラミンゴが目の前に降り立つ。
「邪魔よ、アンタもね」
「そう言うなよ。”マーレ”」
ドフラミンゴの意味ありげな笑みと、わざわざ強調された自分の忌み名にフレイアの眉がピクリと跳ねる。
「お前も分かるだろう? 平和を知らねェガキ共と、戦争を知らねェガキ共との価値観は違う!! 頂点に立つ者が善悪を塗り替える!!」
「……」
「今この場所こそ”中立”だ!!」
「中立……」
フレイアの頭の中に祖父の顔がチラついた。それを振り払うように首を振ったフレイアは、ドフラミンゴに向けて刀を振るう。
「だから何だって言うのよ。これが世界の分かれ目になるなんて分かりきってる事実、叫んで酔ってる男に興味ないんだけど!」
「そう結論を急ぐなよ、”マーレ”」
「アンタ一体……」
「海の民であるお前がこの場に立ち会い、片方に肩入れするなんてこと本来あっちゃならねェことだろう?」
「!!」
ドフラミンゴの蹴りを冷静にガードしながらも、彼の言った言葉を考えるフレイア。それを見たリオンはフレイアとドフラミンゴの間に入るようにナイフを投げた。
「リオン」
「何こんなところで止まってんだ。お前が戦線引き上げなくて誰がやるんだ。さっさと行け!」
「……分かってるわよ」
ドフラミンゴの横をすり抜けるように走っていくフレイアを見送り、リオンは新しく取り出したナイフを構える。その表情が嫌悪に染まっているのを見て、ドフラミンゴは「フフフッ」と笑みをこぼした。
「ナイト気取りか?」
「お前のような男に、フレイアの辿る道を語る権利はねェ」
リオンの言葉にドフラミンゴは顔面同士をスレスレまで近づける。
「それは、おれが天竜人だからか!?」
「……」
囁くように口にされた言葉にリオンは蹴りを返した。片手でやすやすと止められたものの、体を捻って距離を取ったリオンは眉間に皺を寄せながらドフラミンゴを睨みつける。その視線すら愉快だとばかりにドフラミンゴは笑った。